巨匠ダニエル・バレンボイム、ベルリンよりオンライン記者会見-今年6月に16年ぶりの来日

バレンボイム会見
撮影 中嶌英雄

現代クラシック音楽界の巨匠、ダニエル・バレンボイムが今年6月に来日し、東京、大阪、名古屋で合計4公演のピアノリサイタルを開催する。16年ぶりの来日に先立ち、ベルリンのバレンボイムの自宅と都内会場を繋いで、オンライン記者会見が開催された。

この公演は、昨年12月上旬にヨーロッパのマネジメントからテンポプリモに来日公演の打診があり、当初は中国、韓国、日本のアジアツアーを計画していた。ヨーロッパでの新型コロナウイルスの感染拡大や日本の緊急事態宣言でスケジュールが流動的となり、一時立ち消えになったものの、日本側の主催者や関係者の強い要望を伝え続けた結果、その熱意に応えて急遽来日が実現した。

同社の中村聡武社長は「超多忙なマエストロが、快く記者会見に応じてくれました。クラシックコンサートに関して、海外からのオンライン記者会見は恐らく初めてで、大変貴重な機会となった。この時期に偉大な演奏家が日本にやってきて、ベートーヴェンの素晴らしい演奏を届けてくれる事で、日本の聴衆の皆様に感動とエネルギーを与えてくれるのではないか。日本の音楽界の再活性化に繋がれば」と期待を寄せた。

バレンボイム

バレンボイムは、初めに日本公演への思いを語った。「日本には多くの思い出があり、最初に行った1966年のコンサートはかなり昔だが、今でもはっきり覚えている。84年か86年にもベートーヴェンのソナタを弾きました。なぜ日本が印象深く、私の好きな国かというと、観客の皆様がただイベントに行くのではなく、音楽への非常に強い関心と、真摯な気持ちでコンサートに足を運んでいるのを感じるから」と過去の公演を振り返った。「コロナ禍では、健康や経済は重要な課題だが、文化や精神世界をなおざりにしてはいけない。そんな中で開催される日本での演奏会を非常に喜ばしく感じている」と笑顔を見せた。

今回のプログラムは2種類。ベートーヴェンの初期の4つのピアノ・ソナタと後期の3つのピアノ・ソナタだが、マエストロの最初の提案は、計8回のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲チクルスだったという。バレンボイムは「もし、もっと時間があって8回のリサイタルが許されるなら、全てを演奏したはず」と話した。演奏会ではピアノ製作者クリス・マーネと共同開発し、2015年に制作されたピアノ「バレンボイム マーネ・スタインウェイ」が持ち込まれる予定だ。一般的なピアノは低音弦が他の弦の一部と交差する配置だが、このピアノは「弦がほぼ全て平行に設置されていて、低音部は一般的なピアノに比べて少し弦が太い。それぞれの弦が独立して平行なため、より音色が豊かで透明感のある音が出せる」とのこと。さらに自らの手に合わせ、既存のグランドピアノより鍵盤の幅が狭く作られているという。

東京公演の会場であるサントリーホールと、2020年に収録を行ったベルリンのピエール・ブーレーズ・ザールの違いについては「音響的には何の心配もしてなく、調整の必要性はほとんど感じていない。サントリーホールでは何度も指揮もしていて、弾き振りもしているので、どんなホールかよく知っている。確かに音響的に非常にゆっくり音が返ってくる会場、共鳴の強い会場も速い会場もあれば、音が埋もれてしまう会場もある。ピエール・ブーレーズ・ザールを始めサントリーホールは特筆すべき、素晴らしい音響を持っている」とコメント。

バレンボイム

3都市で演奏される「後期三大ソナタ」について「音楽史において、非常に重要な作品。ベートーヴェンが最後に書いた作品だからというよりは、一連の流れを経てここに到達し、非常に満たされるプログラムなので素晴らしい」と話し、日本の観客については「とても集中して聴いていただける。この作品こそ、集中力をもって聴くに値する。日本の方々には、楽しんでいただけるのではないか」と期待を込めた。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタには変奏曲やフーガの要素があるが、バッハとの違いについて質問されると「ベートーヴェンのフーガは、ある意味で激情的。『ハンマー・クラヴィーア』のフーガは、規模が壮大でドラマティックだが、バッハにはこの要素は見られない。全く違うそれぞれの変奏曲とフーガだが、ベートーヴェンとバッハには違う文化がある。ベートーヴェンのフーガはバッハが存在してこそ、出来た作品だということを忘れてはいけない」と語った。

最後にバレンボイムは「コロナ禍で世界情勢が変わろうと、音楽の取り組み方への変化はなかった。ただ以前なら2・3年前にコンサートの計画を立てて開催していたが、今は計画を立てるのが難しくなってしまった。コロナの影響で世界中を旅する事が難しくなり、日本にも頻繁に行くことが難しくなっているので、今回の来日を本当に心より楽しみにしている」と締めくくった。

 

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コンサート情報

 緊急開催決定!
◇ダニエル・バレンボイム ピアノ・リサイタル
「ベートーヴェン ピアノ・ソナタの系譜」

【第1夜 最初のソナタ】

日時:2021年6月3日(木)19:00開演

会場:サントリーホール

出演:ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

曲目:ピアノ・ソナタ第1番 作品 2-1 / ピアノ・ソナタ第2番 作品 2-2 / ピアノ・ソナタ第3番 作品 2-3 / ピアノ・ソナタ第4番 作品 7

【第2夜 後期三大ソナタ】

日時:2021年6月4日(金)19:00開演

会場:サントリーホール

出演:ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

曲目:ピアノ・ソナタ第30番 作品 109 / ピアノ・ソナタ第31番 作品 110 / ピアノ・ソナタ第32番 作品 111


◇ダニエル・バレンボイム ピアノ・リサイタル
 大阪公演「後期三大ソナタ」

日時:2021年6月7日(月)18:30開演

会場:フェスティバルホール(大阪)

出演:ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

曲目:ピアノ・ソナタ第30番 作品 109 / ピアノ・ソナタ第31番 作品 110 / ピアノ・ソナタ第32番 作品 111


◇ダニエル・バレンボイム ピアノ・リサイタル
 名古屋公演「後期三大ソナタ」

日時:2021年6月9日(水)18:45開演

会場:愛知県芸術劇場コンサートホール

出演:ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

曲目:ピアノ・ソナタ第30番 作品 109 / ピアノ・ソナタ第31番 作品 110 / ピアノ・ソナタ第32番 作品 111

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ダニエル・バレンボイム
Daniel Barenboim,Pianist/Conductor

Daniel Barenboim

© Deutsche Grammophon

1942年生まれ。5歳より両親からピアノを習い、7歳でピアニストとしてデビュー。1952年には10歳でロンドンとウィーン、55年にパリ、56年でローマに相次いでデビュー、57 年にはストコフスキーとの共演でニューヨークにデビューし、国際的な評価を確立した。54年にはフルトヴェングラーから「バレンボイムの登場は事件である」と評されている。60年代にはベートーヴェンの協奏曲全曲でオットー・ クレンペラーと、ブラームスの協奏曲全曲でサー・ジョン・バルビローリと共演、レコーディングも行った。66年から69年にかけては、自身最初のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音を行っている。

また、68年には、ピンカス・ズッカーマン(ヴァイオリン)、ジャクリーヌ・デュ・プレ(チェロ)とともにトリオを結成。以来フィッシャー・ディースカウ、イツァーク・パールマン、アイザック・スターン、ヨーヨー・マ、マキシム・ヴェンゲーロフ、マルタ・アルゲリッチ、エマニュエル・パユら時代を代表するソリストとともに室内楽にも取り組んでいるレパートリーはピアノ・室内楽・指揮ともに多岐にわたり、バッハからベートーヴェン、ブラームス、ワーグナーに至るドイツ語圏の作品の演奏はとりわけ圧倒的な支持を得ている。作品の細部のみならず作曲家や時代背景までをも俯瞰し理解したうえでの確信的な音楽が特徴で、ベートーヴェンやモーツァルトのピアノ協奏曲・ピアノ・ソナタ全曲、バッハの平均律クラヴィーア曲集全曲といった集中的な演奏や録音が多く、いずれも好評を博している。2020年12月には自身5度目となるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音をリリースして注目を集めた。

指揮者としても精力的に活動し、パリ管弦楽団、シカゴ交響楽団、シュターツカペレ・ベルリン、ミラノ・スカラ座の音楽監督、ベルリン・フィルの楽団史上初の名誉指揮者などを歴任。22年1月には、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートへの自身3度目の出演が予定されている。
現在は指揮とピアノの双方で精力的に活動を続ける一方、99年に文学者のエドワード・サイードとともに設立したウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を率い、若手音楽家の育成や中東和平を希求する活動にも積極的に取り組んでいる。グラミー賞、大英帝国騎士勲章、レジオンドヌール勲章、ドイツ連邦共和国功労勲章、高松宮殿下記念世界文化賞など受賞歴も多い。

 

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