佐渡裕プロデュースオペラ2021“改訂新制作”「メリー・ウィドウ」―ヒロイン役に次代のスター、高野百合絵と実力派、並河寿美

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左から、広渡勲、佐渡裕、並河寿美

KOBELCO大ホール(兵庫県西宮市)で「佐渡裕プロデュースオペラ2021 喜歌劇『メリー・ウィドウ』」の開催に先立ち、 記者会見が行われた。

2021年の佐渡裕芸術監督プロデュースオペラは、“オペレッタ銀の時代”を彩るフランツ・レハールの『メリー・ウィドウ』を上演する。美しい音楽、ダイナミックなダンスに笑いありと、ベル・エポックのパリに咲くロマンティック・コメディだ。舞台は1900年頃のパリ、裕福な未亡人のハンナを取り巻く物語。2008年の上演で大きな反響を呼んだ同作品が13年の時を経て、楽しさはそのままに新たなキャストで“改訂新制作”として帰ってくる。

「物語の核になるのは“子どものようで大人な二人の恋のお話”。お客様もドキドキ、イライラし、素直になればいいのにと思わせるところに、この作品の深さ、面白さがあります。ディスタンスをとりながらお互い好きとは言わないけれど好きになっているのが面白い。そういう意味では今年、この作品にしてよかったのではないか」と佐渡芸術監督。

本作の一番の特徴は「関西らしい徹底したエンターテイメント性」。宝塚歌劇風の演出やお笑いの要素をふんだんに盛り込んだ“兵庫でしか上演できないオペレッタ”で、佐渡芸術監督も深い思い入れを持つ記念碑的な作品に仕上がった。観る者を笑いに包む風刺の数々に注目したい。演出家は、音楽プロデューサーでもある広渡勲。ドイツで活躍するサイモン・ホルズワースのお洒落な舞台装置、イタリアのスティーヴ・アルメリーギの手掛けた、当時の雰囲気そのままの豪華な衣裳も見どころだ。


並河寿美

ハンナ役の並河寿美は「2008年の『メリー・ウィドウ』ではヴァランシエンヌ役でしたが、今回ハンナの役をさせていただくことになり、私の中では大人になったような気分です。前回は、憧れの歌手だった佐藤しのぶさんがハンナ役で、同じ舞台に立たせていただいたことが大きな経験となり、毎日の稽古が充実したことを覚えています。美しく、煌びやかで、艶やかな佐藤さんの印象が強く残っていますが、あくまで佐藤さんのハンナはリスペクトすべきキャラクターとしつつ、私なりのハンナを演じたい」とコメント。

高野百合絵

高野百合絵/別日に撮影

同じくハンナ役の高野百合絵は、リモートで登壇。映像で観た2008年の公演について「全てのエンターテインメントがぎゅっと詰まった、オペレッタを超えた豪華なショーのようにも見えて、特に佐藤さんのハンナは本当に美しく、まさにディーヴァという存在感がありました」と話し「私はまだまだ足元にも及びませんが、そんな存在感のある、皆様から愛されるハンナ、歌い手になりたい」と意気込みを語った。さらに「舞台では遠慮を捨てて堂々と演じ切りたい。愉快で楽しい作品なので、ハッピーな『メリー・ウィドウ』の世界にお連れできるよう頑張ります」とも。


広渡勲

演出家の広渡は「大学の先生から教わった、<舞台芸術には3つの要素がある。演者、それを受け取る観客、感動を結ぶ場としての劇場という三要素がきちっと正三角形になったときに最高の効果が得られる>ということを、生涯、念頭に置いてきました。観客がどう受け取って楽しんでいただけるのか、観客あっての舞台芸術だということは、プロデューサー出身の演出家としては一番大事にしてきました。オペラを能と例えると、オペレッタは狂言。関西は能、狂言、歌舞伎、文楽など日本の舞台芸術の発祥の地でもあります。お客様も東京とは少し違います。関西の方はすべて楽しまれ、守備範囲が広く、贅沢。そういう方たちに十分楽しんでもらうにはどういう風に舞台を創っていくべきか、それをこのお仕事を受けたときに最初に考えました」と振り返った。

また演出や見せ場について「宝塚歌劇風の演出を取り入れていますが、宝塚と言えば銀橋。歌舞伎でいうと花道です。ここはお客様と演者が出会う場所。身近に肌で感じていただくということに重点を置いていきたい。また、前回取り入れた、グランドフィナーレは今回も考えています。オペレッタというのは時代の雰囲気、世相を盛り込んでいかなければなりません。その場その場の趣向を最大に凝らして、世相を反映しながら見せ場を作っていきたい。究極のエンターテイメントを皆様に提供するには、職人芸が必要です。佐渡マエストロはじめ、舞台のスタッフの方、出演者の皆さんの職人芸を最高に発揮して、コロナ禍の鬱陶しい気分を一掃するような舞台にしたい」と語った。

ニエグシュ役の桂文枝氏からは、ビデオメッセージが届き「ニエグシュという役は、狂言回しのような感じで、私が最初からずっと盛り上げていくというような役割です。オペレッタというのは喜劇ですから、面白く盛り上げ、皆さんに楽しんでもらえるように、それでいて、それなりの”品”も忘れず、皆さんのお芝居、歌を壊さないように、バランスを見ながら演じたい。皆で歌うところ、踊るところもしっかりと練習して、僕にできる限りのことをやりたいと思います」と話した。


佐渡裕

佐渡芸術監督は当時を振り返りつつ「2008年の『メリー・ウィドウ』は、今思い出しても誇らしい作品です。世界中で多く上演されている演目の一つですが、ここ兵庫で、世界で唯一の『メリー・ウィドウ』が創れたと自負しています。それは、関西でしか創れないものを創ったということです」と語った。

また同劇場の開館時を思い返し、宝塚歌劇を観ている人にもオペラを見てほしいと感じたという。「『メリー・ウィドウ』は宝塚歌劇をリスペクトした上で、そのテイストを取り入れ、OGの方にも出演していただきました。もう1点は、お笑いの文化です。前回はニエグシュ役を桂ざこばさんにお願いしました。今回は、本当によく引き受けてくださったと思いますが、桂文枝さんに出演していただきます。文枝さんにはジルヴェスター・コンサートに何年間か出ていただきました。文枝さんのお囃子までも並河さんと一緒にやりましたが、文枝さんは完璧主義者で、何十分も練習させられた思い出があります」と笑顔を見せた。

13年前の公演について「前回の『メリー・ウィドウ』では、開幕してから観たお客様の反響が大きく、スタッフもホワイエに残席表を出すなど工夫をしてくれて、結果的に満席近くになり、作品のよさとそれを確実に伝えていくスタッフの努力があればやっていけるのだという自信を持ちました。まだセンター(兵庫県立芸術文化センター)として成功の実績がなかった頃に、皆で協力して『メリー・ウィドウ』という夏のイベントを創ったということこそが一番の大きな成果だったと思います」と話した。


集合

続けて「このように『メリー・ウィドウ』は、これまでも、これからも私にとって一番に誇れる、思い出に残る作品となっています。さらに今年は新しいキャストで新鮮な作品を、そしてコロナ禍の今だからこそ皆が笑って、手拍子し、感動するようなものをたくさん届けるために最善の努力をして、7月の本番を迎えたいと思います」と締めくくった。

 

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コンサート情報

◇佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ 2021
喜歌劇 メリー・ウィドウ(全3 幕/⽇本語上演・⽇本語字幕付/改訂新制作)

開催日時:2021/7/16(金), 17(⼟), 18(⽇), 20(⽕), 21(⽔),22(⽊・祝), 24(⼟), 25(⽇) 全8公演 14:00開演

会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

[音楽]フランツ・レハール
[台本]ヴィクトル・レオン/レオ・シュタイン
指揮:佐渡 裕
演出/日本語台本:広渡 勲
装置:サイモン・ホルズワース
衣裳:スティーヴ・アルメリーギ
照明:沢田祐⼆
振付:川西清彦
合唱指揮:矢澤定明

【出演】
<ダブルキャスト>
■7/16、18、21、24
ハンナ・グラヴァリ:高野百合絵
ミルコ・ツェータ男爵:折江忠道
ヴァランシエンヌ:⾼橋 維
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:黒田祐貴
カミーユ・ド・ロシヨン:小堀勇介
カスカーダ子爵:小貫岩夫
ラウール・ド・サンブリオッシュ:大沼 徹
ボグダノヴィッチ:泉 良平
シルヴィアーヌ:香寿たつき(全日)
ニエグシュ:桂 文枝(全日)
プリチッチュ:志村文彦
プラスコヴィア:押見朋子
クロモウ:森 雅史
オルガ:鈴木純子
エマニュエル:鳥居かほり(全日)

■7/17、20、22、25
ハンナ・グラヴァリ:並河寿美
ミルコ・ツェータ男爵:片桐直樹
ヴァランシエンヌ:市原 愛
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:大山大輔
カミーユ・ド・ロシヨン:樋口達哉
カスカーダ⼦爵:水口健次
ラウール・ド・サンブリオッシュ:晴 雅彦
ボグダノヴィッチ:ジョン ハオ
シルヴィアーヌ:香寿たつき(全日)
ニエグシュ:桂 文枝(全日)
プリチッチュ:三戸大久
プラスコヴィア:清水華澄
クロモウ:河野鉄平
オルガ:板波利加
エマニュエル:鳥居かほり(全日)


合唱:ひょうごプロデュースオペラ合唱団
管弦楽:兵庫芸術⽂化センター管弦楽団

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佐渡 裕(指揮/兵庫県立芸術文化センター芸術監督)
Yutaka Sado,Conductor/Artistic Director of Hyogo Prefectural Arts Center


sado

京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝。パリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ケルン放送交響楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、北ドイツ放送交響楽団等欧州の一流オーケストラに多数客演を重ねている。
2015年9月より、オーストリアで100年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。オペラ公演では2003年エクサン・プロヴァンス音楽祭『椿姫』、2007年オランジュ音楽祭『蝶々夫人』、トリノ王立歌劇場の2010年『ピーター・グライムズ』、12年『カルメン』、15年『フィガロの結婚』など多くの実績を持つ。兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者。CDリリースは多数あり、最新盤はトーンキュンストラー管弦楽団を指揮した15枚目のCD「プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3 番(ピアノ:反田恭平)」(2021年2月発売)。著書に「僕はいかにして指揮者になったのか」(新潮文庫)、「棒を振る人生~指揮者は時間を彫刻する~」(PHP新書/PHP文庫)等。

広渡 勲(演出/日本語台本)
Isao Hirowatari,Direction/Japanese script


hirowatari

音楽プロデューサー・演出家。

1940年福岡市生まれ。早稲田大学第一文学部演劇専修卒業。東宝演劇部を経てジャパン・アート・スタッフに移籍。日本舞台芸術振興会(NBS)及び傘下の東京バレエ団の制作プロデューサーとして、「ミラノ・スカラ座」「ウィーン国立歌劇場」「バイエルン国立歌劇場」「ベルリン・ドイツオペラ」「英国ロイヤル・オペラ」「パリ・オペラ座」等、世界の主要歌劇場やバレエ団を数多く招聘し、総合プロデューサーとして活躍。指揮者カルロス・クライバーやバレエのモーリス・ベジャール等多岐にわたる海外の著名な芸術家との交流を深め、2000年フランス共和国政府から「芸術文化勲賞シュヴァリエ」受勲。演出家として2004年「アグネス・バルツァ=ギリシャを歌う」をはじめ、「麻実れい」や「佐藤しのぶ」のリサイタルを継続的に担当、オペラティックでドラマティックな独自の美的空間の創造で注目を集める。2008年、兵庫県立芸術文化センターにおける佐渡裕指揮、喜歌劇『メリー・ウィドウ』、2011年『こうもり』の演出を担当し、成功に導く。2002年NBS退社後、昭和音楽大学教授就任(2011年より客員教授)。福岡文化財団理事。2020年12月音楽之友社より“ マエストロ、ようこそ“ を出版。

高野百合絵(メゾ・ソプラノ)
Yurie Takano, Mezzo-soprano


takano

東京音楽大学、及び大学院を首席で修了。全日本学生音楽コンクール全国大会第1位、併せて日本放送協会賞受賞。日本クラシック音楽コンクール全国大会第1位、併せてグランプリ賞受賞。2018年NISSAY OPERA『コジ・ファン・トゥッテ』ドラベッラ役を在学中にオーディションで射止め、華のある舞台姿と存在感で観客を魅了。オーケストラ・アンサンブル金沢など国内外のオーケストラのソリストを務める。2020年デビューアルバム「CANTARES」を日本コロムビアよりリリース。芸術監督プロデュースオペラ初出演。

並河寿美(ソプラノ)
Hisami Namikawa, Soprano


namikawa

大阪音楽大学大学院修了。平成30年度文化庁芸術祭大賞、令和元年度兵庫県文化賞他多数受賞。日生劇場『フィデリオ』レオノーレ、二期会『イル・トロヴァトーレ』レオノーラ等で絶賛を博す。またZ.メータ指揮NHK交響楽団「第九」(東日本大震災支援チャリティコンサート)をはじめ多くのコンサートに出演。ヴェルディ「レクイエム」、マーラー「復活」などでも高い評価を得ている。大阪音楽大学特任准教授。二期会会員。
芸術監督プロデュースオペラには2006年・08年『蝶々夫人』、2008年『メリー・ウィドウ』( ヴァランシエンヌ)、2012年『トスカ』、2017年『フィガロの結婚』ほか多数出演。

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