歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見「今回は大いに冒険します」

モーツァルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』記者会見
【上段・男性ソリスト(左から)】金山京介、デニス・ビシュニャ、三戸大久、近藤圭 【下段(左から)】高橋絵里、鷲尾麻衣、ヴィタリ・ユシュマノフ、井上道義、森山開次、小林沙羅、藤井玲南

年明け2019/1/20(日)より、富山、東京、熊本の3都市にて上演されるモーツァルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』。その記者会見が東京芸術劇場にて行われた。

井上道義総監督により2015年に全国共同制作されたオペラ『フィガロの結婚』に続くダ・ポンテ三部作第2弾となる本作品では、井上が引き続き総監督・指揮を務め、井上が厚く信頼を寄せる森山開次がオペラ初演出に挑む。

「野田秀樹とやった『フィガロの結婚』のあとになにをしようかと考えたときに、僕の年も考慮して、思いきり若い人とやりたいなと。森山君は素晴らしい才能を持っているし、いろいろな面や分野で活躍できる人。僕の目は間違いない。今回は大いに冒険します。お客さんがいい意味で気楽にオペラに向き合えて、誰が聴いても観ても合点がいくようなやり方で、アジア人たちが『ドン・ジョヴァンニ』をやる。それが世界的に意味があるようやっていきます」と井上が意気込みを語ると、その井上の厚い信頼を勝ち取っている森山も、「このような素晴らしい大きなチャレンジに声をかけていただいたことをうれしく思っています。僕の名前を挙げていただいたことは勇気のいることだったと思いますが、皆さんの気持ちを最大限に受け止めて、委縮することなく思い切って挑戦することが僕の役割だと思っています。オペラに関しては知識も浅いですし、まだまだ及ばないところではありますが、その中で僕が何をできるか。知らない強みを生かして、こんなことはどうだろうかと無茶ぶりをするかもしれません。ダンスが入るオペラも今どき珍しくはないですが、改めてダンサーがオペラの歌たちとどういう関係性を築けるかなど、一生懸命勉強して頑張っていきます」と熱い言葉を重ねた。

 

 

今回、日本語での上演が注目の一つとなっているが、その監修を務めるのも井上だ。「日本語の歌詞はこれまでもいろいろあったけれども、どれも古くてダメ」と全編にわたって手を入れなければならない苦労を滲ませながらも「無駄な努力かもしれない。やっぱり『ダメだ、原語でやれ』となるかもしれないけれども、それでもやってみたい」と新たな試みへの意欲を見せた。

一方の森山も「皆さんが“踊るオペラ”とおっしゃいますが、僕が入る以上はその部分に食い込んでいかないといけないと思っています。僕の中では“踊る”は“身体”と同義語です。単に音楽にあわせることが踊りではなく、演じる中で出てくる身体の表現も同じです。動かなくても踊っているような見せ方をしたい」と井上に負けない闘志を見せつつ、自身の特長を最大限に生かし演出を手掛けていく想いを覗かせた。

 

 

さらに今回の舞台装置や衣装デザインにも演出の森山が大きく関わっている。森山が最初に抱いた想いは“女性をしっかりと描いていく”ことだったという。「『ドン・ジョヴァンニ』は男性をしっかりと描くことが当然ではあるけれども、出演する女性3名が三者三様でドン・ジョヴァンニを取り囲んでいく姿がとても印象的な舞台だと思っている」と語り、そこをしっかり描くことで「ドン・ジョヴァンニがまるで女性の子宮の中で暴れまわっているようなイメージ」にしていくという。だが、“置き換える”演出にするのではなく、バックグラウンドにそうした女性たちを描いていく。今回女性ダンサーのみとなったのも、その“女性たちが取り囲む”ことを際立たせるためらしく、そうした想いが舞台装置や衣裳デザインに表れており、これまでの『ドン・ジョヴァンニ』とは全く違う、新たな『ドン・ジョヴァンニ』を作り上げていく。

 

舞台装置の模型

 

オリジナル作品をリスペクトしつつも、斬新な演出・振付による新しいオペラの創造、さらに全編日本語での上演に挑戦する。選ばれしソリストたちと10人の女性ダンサーとともに音楽とダンスで描く新しい『ドン・ジョヴァンニ』が幕を開ける。

 

ソリストコメント

 

ヴィタリ・ユシュマノフ(ドン・ジョヴァンニ)
ジョヴァンニは一番好きな役ですが、初めて歌ったのはドイツ語で、2回目は原語、3回目で日本語・・・なぜ私はこのオペラを毎回違う言語で歌うのかと思っております(笑)。日本人ではない私にとって今回大きなチャレンジですが、日本語はとてもきれいな言葉ですし、日本も大好きな国。素晴らしい皆さんと一緒に頑張ります。

三戸大久(レポレッロ)
僕は42歳なんですが、気づけばカンパニーの中での最年長になっていて恐ろしく思っております(笑)。僕らは原語でやる世代だと思っていたので、初めて日本語でやることに戸惑いはありますが、新しい試みを新しい世代でやれることに興奮や期待を覚えております。

高橋絵里(ドンナ・アンナ)
アンナは10年以上前にイタリア語で歌ったことがあるのですが、日本語で歌うことはもちろん初めてです。今回日本語でとても緻密に作っていただいていることを感じながら音楽稽古に励んでおります。“伝える”ことにこだわり、日本語でやっているからこそきちんと届けられるように歌いたいです。

デニス・ビシュニャ(騎士長)
『ラ・ボエーム』、『魔笛』に次ぐ3回目の日本で、今度は日本語のオペラに出演します。日本語はイントネーションなども難しいですが、マエストロの翻訳は名訳で歌いやすいです。オーディションでは森山さんに「踊ってみて」と言われて驚きましたが、ステージでダンスを披露するかもしれません(笑)。とても楽しみにしています。

鷲尾麻衣(ドンナ・エルヴィーラ)
『ドン・ジョヴァンニ』には3人の女性が出演しますが、私はエルヴィーラ役が一番自分の素に近いものがあると思っています。ヒステリックで自分の感情を押し殺さず、大好きな人に無我夢中で追いかけていく・・・女性は少なからずヒステリックな部分を持っていると思うので、そういう部分を舞台上でぶちまけられることを楽しみにしております(笑)。

金山京介(ドン・オッターヴィオ)
僕は今年32歳でおそらくカンパニー内で一番下なのですが、オペラのプロダクションでは上と下の差が10歳というのは若いと感じております。オッターヴィオは唯一のテノールなので、テノールらしさを出して精一杯頑張りたいです。

小林沙羅(ツェルリーナ)
幼少からクラシックバレエを習っていて踊ることが大好きなので、森山さんが演出と聞き、絶対にこの舞台に立たせていただきたいと思っていました。オーディションでは「くるくると3回回って椅子に座ってください」と言われたのですが、“絶対に歌いたい”という気持ちが強すぎて回りすぎてしまいました(笑)。可愛らしさだけじゃないツェルリーナを出していきたいです。

藤井玲南(ツェルリーナ)
大きな挑戦にドキドキしておりますが、楽しみの方が強く幸せを感じております。大学院の時にドイツの歌劇場に研修員として所属していたのですが、『ドン・ジョヴァンニ』はその時ドイツ語で勉強させていただきました。なかなか激しい演出だったこともあり、思い入れが深い作品です。今回「くるくると回って椅子に~」と言われるようなオーディションだったので、自分の持っているものをさらけだしていかないとついてけないと感じました。エネルギーに満ち溢れた、誰も観たことがない舞台になるのではないかと思っています。

近藤圭(マゼット)
僕は、母がバレエの教師、姉もバレエダンサーで、僕もバレエをやれといわれて育ちましたが、白タイツがどうしても嫌ででやりませんでした。今は物凄く後悔しています(笑)。オペラ畑に居ながらなんですが、バレエの舞台を観るのが大好きで、かなりの数を観ていますが、踊れるかどうかはわかりません・・・。森山さんの演出でどんな化学反応が生まれるか楽しみです。

 

 

モーツァルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕
モーツァルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕
公演日 : 2019/1/20(日) 14:00、2019/1/26(土) 14:00、2019/1/27(日) 14:00、2019/2/3(日) 15:00
出演者 : 総監督・指揮:井上道義 演出・振付:森山開次 ヴィタリ・ユシュマノフ(ドン・ジョヴァンニ)、三戸大久(レポレッロ)、高橋絵理(ドンナ・アンナ)、デニス・ビシュニャ(騎士長)、鷲尾麻衣(ドンナ・エルヴィーラ)、金山京介(ドン・オッターヴィオ)小林沙羅(ツェルリーナ:1/20・1/26・2/3出演)、藤井玲南(ツェルリーナ:1/27出演)、近藤圭(マゼット) ダンサー:浅沼圭、碓井菜央、梶田留以、庄野早冴子、中村里彩、引間文佳、水谷彩乃、南帆乃佳、山本晴美、脇坂優海香 管弦楽: 【富山公演】オーケストラ・アンサンブル金沢 【東京公演】読売日本交響楽団 【熊本公演】九州交響楽団 合唱: 【富山公演】一般市民公募 【東京公演】東響コーラス 【熊本公演】ラスカーラ・オペラ協会
場所 : オーバード・ホール[富山市芸術文化ホール]、東京芸術劇場 コンサートホール、熊本県立劇場演劇ホール
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