2019年06月13日
宮本亜門、髙田賢三が東京二期会『蝶々夫人』制作発表会に登壇

今年10月に開催される東京二期会オペラ『蝶々夫人』の制作発表会が行われ、演出の宮本亜門、衣裳デザインの髙田賢三らが登壇した。宮本亜門は5月末に前立腺がんの手術を終え、今回が術後初の公の場となった。
二期会と宮本亜門が初めてタッグを組んだのは17年前。それ以降、数多くの作品を手掛けており、毎回好評を博している。今回の作品はプッチーニ作曲 『蝶々夫人』。世界に先駆け東京でワールド・プレミエを迎え、その後ザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー・ドレスデン)やデンマーク王立歌劇場などで上演される。
宮本亜門は「以前より『蝶々夫人』に取り組みたいと考えており、世界の名だたる劇場でこの作品を上演ができることは本当に嬉しいです。オペラというのは歴史的なものですが、演出家・指揮者・衣装で様変わりします。常に新しく、豪華で美しい、贅沢なものです。オペラを観たことがない方も先入観なしに気軽に来てほしいです」と語った。
宮本亜門
『蝶々夫人』の舞台は日本である。この作品が上演される場合、演出や衣装に関して「日本らしさ」とは何かという疑問がつきまとい、日本人が見ると違和感を感じることは少なくない。また、内容に関して倫理的な問題で批判が向けられることもある。そういう意味では、特に海外では上演が最も難しい作品のひとつだとされている。
衣装デザインを担当する髙田賢三は「人生2度目のオペラへの挑戦ですが、思い入れがあり憧れていた『蝶々夫人』に取り組むことができることを大変嬉しく思います。今回は日本人が見ても美しいと思える着物を作ることを意識しました。具体的に言うと、素材は『染』ではなく『織』で。少しモダンなイメージを持っています。そして、蝶々夫人が洋服に憧れる様子から、当時そうであっただろう、自分の着物で作られた洋服も登場する予定です」と述べ、KENZOの世界観そのままに『日本の美』を表現することを示唆した。
髙田賢三
宮本は演出に関して「私が伝えたいテーマは『愛』。蝶々さんとピンカートンの愛、蝶々さんと息子の愛…様々な形がありますが、難しさでなく、美しさに重点を置いています。宗教、戦争、貧困など多くの要素を大切にして世界観は壊さずに、新たな視点から、現代を生きるわたしたちの感性も取り入れたいです」と語った。
『蝶々夫人』の大きな魅力は、言うまでもなく音楽の素晴らしさ。イタリアの作曲家プッチーニが描いた日本の『愛』に、宮本は宇宙さえ感じると言う。
東京フィル首席指揮者:バッティストーニとの初のコラボレーションに関しては「演奏を聴いて、本当に天才的だと感じました。今、テンポ感など具体的な打ち合わせを行っていますが、良い作品になるという確信がどんどん大きくなっています」と述べ、どんな化学反応が生まれるか楽しみだと期待を膨らませた。
東京二期会『蝶々夫人』は2019/10/3(木)~10/13(日)まで、東京文化会館とよこすか芸術劇場にて上演。
東京二期会オペラ劇場
『蝶々夫人』〈新制作〉
【日本語及び英語字幕付原語[イタリア語]上演】
作曲:ジャコモ・プッチーニ
公演日:2019/10/3(木)、4(金)、5(土)、6(日)、13(日)
指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:宮本亜門
衣裳:髙田賢三
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
会場:10/3(木)~6(日) 東京文化会館 大ホール、13(日) よこすか芸術劇場
キャスト:[上段]10/3(木)・5(土) ・13(日)
[下段]10/4(金)・6(日)
蝶々夫人 森谷真理
大村博美
スズキ 藤井麻美
花房英里子
ケート 成田伊美
田崎美香
ピンカートン 樋口達哉
小原啓楼
シャープレス 黒田 博
久保和範
ゴロー 萩原 潤
高田正人
ヤマドリ 小林由樹
大川 博
ボンゾ 志村文彦
三戸大久
神官 香月 健
白岩 洵
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
Andrea Battistoni,conductor
1987年ヴェローナ生まれ。アンドレア・バッティストーニは、国際的に頭角を現している同世代の最も重要な指揮者の一人と評されている。2013年ジェノヴァ・カルロ・フェ リーチェ劇場の首席客演指揮者、2016年10月東京フィル首席指揮者に就任。 『ナブッコ』、リゴレット(東京二期会)、グランドオペラ共同制作『アイーダ』のほ か、〈ローマ三部作〉、「展覧会の絵」「春の祭典」等数多くの管弦楽プログラムで東 京フィルを指揮。東京フィルとのコンサート形式オペラ『トゥーランドット』(2015 年)、『イリス(あやめ)』(2016年)、『メフィストーフェレ』(2018年)で批評 家、聴衆の双方から音楽界を牽引するスターとしての評価を確立。同コンビで日本コロ ムビア株式会社より9枚のCDをリリース。 ミラノ・スカラ座、ヴェネツィア・フェニーチェ劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ス ウェーデン王立歌劇場、アレーナ・ディ・ヴェローナ、バイエルン国立歌劇場、マリイ ンスキー劇場、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管、イスラエル・フィル等世界の 主要歌劇場・オーケストラと共演を重ねている。2017年には初の著書『マエストロ・ バッティストーニの ぼくたちのクラシック音楽』を音楽之友社より刊行。
宮本亜門(演出)
Amon Miyamoto,derector
2004年、ニューヨークのオンブロードウェイにてミュージカル『太平洋序曲』を東洋人初の演出家として手がけ、同作はトニー賞の4部門でノミネートされる。ミュージカルのみならず、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎など、ジャンルを越える演出家として、 活動の場を国際的に広げている。 東京二期会のオペラ演出としては、モーツァルト×ダ・ポンテの三部作として2002年 『フィガロの結婚』(2011、16年再演)、2004年『ドン・ジョヴァンニ』、2006年『コジ・ファン・トゥッテ』(文化庁芸術大賞受賞)を精力的に演出。そして2009年に 『ラ・トラヴィアータ』。13年にはオーストリア・リンツ州立歌劇場シーズンオープニングとして自身欧州でのオペラ初となるモーツァルト『魔笛』を演出し、連日満席の大成功を収めた。15年には東京二期会にて同演目のジャパン・プレミエを飾った。 北米でのオペラ進出は、2007年米・サンタフェ・オペラにてタン・ドゥン作曲の現代オペラ『TEA: A Mirror of Soul』(アメリカン・プレミア)を演出。 2011年、宮本が初代芸術監督に就任した神奈川芸術劇場KAATの杮落とし公演として、三島由紀原作の舞台『金閣寺』を演出。同年ニューヨーク公演も成功をさせ、その後も 再演を重ねた。 その舞台で培った経験をもとに、次は2018年フランス国立ラン歌劇場(ストラスブール、ミュールーズ)において黛敏郎作曲オペラ『金閣寺』を新制作初演した。「宮本亜門の演出は、演劇面における芸術的達成という点でも、公演の成功を完璧なものにした」など絶賛を浴び、19年2月、東京二期会での凱旋公演を行った。 近年の活動としては、2018年9月には日仏友好160周年を記念した「ジャポニスム 2018」の一環として、ベルサイユ宮殿オペラハウスにて、皇太子さまとマクロン大統領 をゲストに、能×3D映像『幽玄』を上演した。また2019年7月には、初めてのフィギュアスケート演出『氷艶2019~月光かりの如く~』(横浜アリーナ)を手がける。
髙田賢三(衣装デザイン)
Kenzo Takada,costume designer
兵庫県生まれ。1960年第8回装苑賞受賞。1961年文化服装学院デザイン科卒業、1965年に渡仏。1970年パリ、ギャラリー・ヴィヴィエンヌにブティック「ジャングル・ジャップ」をオープン。初コレクションを発表。パリの伝統的なクチュールに対し、日本人としての感性を駆使した新しい発想のコレクションが評判を呼び、世界的な名声を得る。 その後ブランドを「KENZO」とし、高い評価を受ける。1984年仏政府より国家功労 賞「シュヴァリエ・ド・ロルドル・デザール・エ・レトル」芸術文化勲章(シュヴァリエ位)受章。1998年仏政府より国家功労賞「コマンドゥール・ド・ロルドル・デ ザール・エ・レトル」芸術文化勲章最高位の(コマンドゥール位)受賞。1999年2月、ニュ-ヨ-クで国連平和賞(タイム・ピース・アワード)の’98年ファッション賞を 受賞。 10月パリコレクレションを最後に KENZO ブランドを退く。同年紫綬褒章を受章。2004年開催アテネオリンピック日本選手団公式服装をデザイン。パリ市よりパリ市 大金賞を受賞。その後、デザイナー活動及び絵画を手掛けている。絵画展は、フランス、モロッコ、アルゼンチン、ウクライナ、ロシアで開催。又、ドイツにて 2008年に開催。 現在は、クリエーションにおける異業種とのコラボレート事業を展開。その他、世界の伝統文化を継承する為の活動をライフワークの1つともしている。2016年仏政府よりレジオンドヌール勲章「名誉軍団国家勲章」(シュヴァルエ位)を受勲。同年、8月下旬より限定一年間、日本において、セブン&アイ・ホールディングスの社傘下のそごう・西武及びイトーヨーカドーのPBブランド「セット・プルミエ」を展開。 2017年12月「夢の回想録」出版。2018年Edition du Chêne より「KENZO TAKADA」を出版。
関連記事
-
ニュース2023/4/11
幻想的なバレエ・スペクタクル「SWAN LAKE ON WATER~ついに、ほんとうの水を得た『白鳥の湖』」8月に開催!
不可能と⾔われ続けてきた壮⼤な⽔の演出とバレエダンサーの共演が遂にステージ上で実現!! 三大バレエと言えば、チャイコフスキー作曲の『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』『白鳥の湖」。...
-
ニュース2023/8/10
「2023 セイジ・オザワ 松本フェスティバル」が8月19日(土)いよいよ開幕!今年も多彩なプログラムでお届け♪
恩師である齋藤秀雄の名を冠して1992年に小澤征爾が創立し、毎夏、長野県松本市で開催されてきた音楽祭『サイトウ・キネン・フェスティバル松本』。2015年からその名前を『セイジ・オザ...
-
ニュース2023/2/16
4年ぶりに帰って来る!延べ866万人が熱狂した世界最大級のクラシック音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2023』5月に開催!
国内外、LFJの常連組から若手までが集結!実力派たち勢揃いでお届けするクラシック音楽の祭典♪ 2022年ロン=ティボー優勝で話題を呼んだ期待の若手ピアニスト、亀井聖矢もピアノ協奏曲...
ユーザーコメント
コメントを投稿する