2019年12月06日

マリス・ヤンソンス 追悼

(C) Peter Meisel (BR)

2019/11/30(土)、世界的指揮者マリス・ヤンソンス氏がサンクトペテルブルクの自宅で逝去されました。享年76歳でした。

ヤンソンス氏は、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とバイエルン放送交響楽団の首席指揮者を務め、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ管をはじめとする多くの一流オーケストラに客演してきたという華々しい経歴を持ちます。

その中でも特筆すべきは、オスロ・フィルの首席指揮者に就任し、その名を世界に知らしめたこと。まだ国際的知名度を持っていなかった同オーケストラで多くのレコーディングを行いレベルアップを成功させました。それと同時にヤンソンス氏本人の声望も飛躍的に上がり、世界中で活躍する指揮者となったのです。

ヤンソンス氏の音楽の特徴は、客観的な姿勢と主観的な楽譜へのアプローチの良い意味でのミックスにあるといえ、父親のアルヴィド・ヤンソンスからの強い影響や、若き日に教えを受けたムラヴィンスキーやカラヤンといった名指揮者たちの影響を昇華した彼のスタイルには独特の魅力が備わっています。

ショスタコーヴィチ、リヒャルト・シュトラウスやマーラーなどを得意とする他にも、イメージに縛られずに多くの作曲家の演奏・録音に取り組んでおり、来日も数多く、日本との関りも深い指揮者でした。また、温かいキャラクターと確かな音楽性で、日本のファンの心を掴んでいました。

楽団員をはじめとする多くの音楽家たち、そして聴衆からも愛されたヤンソンス氏。誰よりも音楽を愛し尊敬する中で生まれる名演は数多く、わたしたちの心の中に残っています。
心よりご冥福をお祈りいたします。

マリス・ヤンソンス(1943/1/14 – 2019/11/30)
Mariss Jansons, Conductor

ヤンソンス

(C) Peter Meisel (BR) 

1943年、ラトヴィアの首都リガに、指揮者アルヴィド・ヤンソンスの息子として生まれた。レニングラード音楽院で学び、卒業後、ウィーンでハンス・スワロフスキー、ザルツブルクでヘルベルト・フォン・カラヤンに師事した。1971年には、レニングラード・フィル(現サンクトペテルブルグ・フィル)で、ムラヴィンスキーのアシスタントとなり、1999年までレギュラー指揮者として、同楽団と密接な関係を築いた。
1979~2000年にはオスロ・フィルの首席指揮者を務め、世界トップレベルのオーケストラへと育て上げた。このほか、ロンドン・フィルの首席客演指揮者(1992~1997年)、ピッツバーグ響の音楽監督(1997~2004年)を歴任。2004~2015年にはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者を務めた。そして2003年からはバイエルン放送交響楽団の首席指揮者を務めている。またベルリン・フィルおよびウィーン・フィルとも定期的に共演。2016年には有名なウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの指揮者を務めたが、これは彼にとって3回目の出演となった。
彼は、バイエルン放送響及びロイヤル・コンセルトヘボウ管を率いて、世界のほぼ全ての主要音楽都市や音楽祭で演奏している。2005年秋には、バイエルン放送響との初の日本と中国へのツアーを行ったが、この時の演奏は日本のマスコミに絶賛され、年間コンサート・ランキングの第1位に輝いた。さらに2012年には、ベートーヴェンの交響曲チクルスが、ミュージック・ペンクラブ・ジャパンによって、外来アーティストによる年間ベスト・コンサートに選ばれた。またヤンソンス率いるバイエルン放送響は、レジデンス・オーケストラとして、毎年、ルツェルン復活祭音楽祭に招かれている。
若手音楽家たちとの共同作業も、彼にとって特別な意義があり、グスタフ・マーラー・ユース・オーケストラとのヨーロッパ・ツアー、バイエルン放送響アカデミーを含むバイエルン地方の様々なユース・オーケストラとの定期的な共演を行っている。
これまでに数多くのレコーディングを行っており、国際的な賞を多数受賞。その中にはショスタコーヴィチの交響曲の全曲録音で受賞したグラミー賞が含まれる。
ペルミ国立歌劇場の芸術監督在任中には、フィリップ・エルサン《トリスティア》(2016)、ドミトリー・クルリャンツキーのオペラ《ノスフェラトゥ》(2014)、アレクセイ・シュマクのオペラ《カントス》(2016)、セル ゲイ・ネフスキーのヴァイオリン協奏曲(2015)など数々の重要な委嘱作品を発表した。
「コンダクター・オブ・ザ・イヤー」には、2007年のエコー・クラシック賞と、2011年のオペルンヴェルト誌によって選ばれている。ヤンソンスとバイエルン放送響は、ブルックナーの交響曲第7番のCDで、2010年にエコー・クラシック賞の「年間最優秀レコーディング(オーケストラ部門)」に選ばれ、2013年には、世界で最も重要で権威ある音楽賞のひとつ「エルンスト・フォン・シーメンス音楽賞」を授与された。
彼は、ノルウェーの「ノルウェー王国功労勲章」、オーストリアの「科学芸術名誉十字勲章」、ラトヴィアの「三ツ星メダル」、バイエルン州の「マクシミリアン勲章」、ドイツの「大功労十字星章」、オランダの「オランダ獅子勲章ナイト」、フランスの最高位の文化賞「芸術文化勲章コマンドゥール」、そして2015年3月にラトヴィアの最高の芸術賞「ラトヴィア音楽大賞」を授与された。

ドヴォルザーク:交響曲第8番、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番(2000年東京ライヴ)
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