佐渡裕プロデュースオペラ「ラ・ボエーム」―演出に、アカデミー賞美術賞受賞のダンテ・フェレッティ

佐渡裕ラ・ボエーム

兵庫県立芸術文化センター開館15周年を記念し、KOBELCO大ホール(兵庫県西宮市)で「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2020 歌劇『ラ・ボエーム』」の開催に先立ち、 記者会見が行われた。

(左から、砂川涼子氏、佐渡裕氏、マリーナ・ビアンキ氏)

同プロデュースオペラでは、2006年に「蝶々夫人」、2012年に「トスカ」を上演。「ラ・ボエーム」は、プッチーニ作品の3作目で、2005 年の開館以降、芸術監督が重視する王道路線の名作だ。「冷たい手を」「私の名前はミミ」「私が街を歩くと」など、珠玉のオペラ・アリアを堪能できる恋と青春の物語となる。

佐渡裕_集合着席

演出は、主に映画美術で世界的な名声を得るダンテ・フェレッティを起用。フェレッティは、イタリアでフランコ・ゼフィレッリやフェデリコ・フェリーニの下で映画美術を担当した後、ハリウッドへ進出し、アカデミー賞美術賞受賞作「アビエイター」「ヒューゴの不思議な発明」(ともにマーティン・スコセッシ監督)、「スウィーニー・トッド」(ティム・バートン監督)の他、「インタビュー・ウィズ・バンパイア」など、著名作の美術を手掛けてきた。オペラでは、ミラノ・スカラ座でリリアーナ・カヴァーニ演出「椿姫」の装置デザインを担当した世界的デザイナーだ。

本作に登場するのは、夢に生きる若者たち。瑞々しい表現が求められるため若手から実績のある中堅まで、旬な歌手をキャスティングした。海外からは、ミラノ・スカラ座アカデミー出身の若手歌手たちを、ミラノでのオーディションによって選抜。フランチェスカ・マンツォ、ソフィア・ムケドリシュヴィリら、近年スカラ座にデビューした逸材が揃う。日本人歌手は、国内外で活躍する砂川涼子がミミ役、笛田博昭がロドルフォ役を演じる。他にも髙田智宏、平野和ら欧州の歌劇場で専属を務める歌手の活躍にも注目したい。

佐渡裕バストアップ800

佐渡は「今回、15 周年に向けてそれぞれのモチベーションが一つに集まり、さらに魅力的なプロデュースオペラとなるでしょう。劇場の中の人々だけでなく、地域の人たちと一緒に作り上げてきた兵庫県立芸術文化センターだが、世界にも誇れるような劇場のあり方―“心の広場”であってほしいという想いでやってきました。そこまで含めて1つの大きなアンサンブルにしていかなければならないと思っています」と話す。「『ラ・ボエーム』は、舞台がパリであることが重要で面白いところ。カルチェラタンという学生街に若者たちが夢を持って集まり、ピュアに自分の夢を追いかける。パリが舞台だが、この青春劇にはどこかで僕たちも共感できるところがあります。貧しくて、夢を持っていて、まるで現代の若手芸人さんに繋がるようなところもあり、団塊の世代の人たちが『自分たちの若いころはこうだった』と観ることもできるし、今の若い人たちにもその美しさを感じてもらえる作品だと思います」とも。

ビアンキ800

ビアンキは「今回は1930年代に設定を持ってきました。通常『ラ・ボエーム』と言えば1幕、4 幕が屋根裏部屋、という舞台設定だが、今回のデザインは船の中。ヨーロッパの若者には、家の代わりに船を安く借りてみんなで生活するという習慣があり、そのアイデアが元になっています。フェレッティ氏の話を聞いた私の解釈では、船は『自由の象徴』という面もあります」と話す。

砂川は「ミミという役は、実は音楽は決して軽いものではなく、オーケストラの圧もあり、情熱や声の持つパワーがとても求められているので、バランスを取るのが非常に難しい。可哀そうとか悲しいという表現を、か細い声で歌ってはいけないのです。音楽の面でもたくさんの準備が必要になってきます。お芝居の面では、あまり表に出すぎず、引きすぎず、というバランスが難しい。なんとなく美しい音楽に流されるのではなくて、本当にリハーサルを重ねて作り上げていくことが大事になってくると思います」と話す。「ミミがお話の中心ではあるが、ラ・ボエームはアンサンブルオペラ だと思っています。誰か1人が特別なわけではなく全員が大事で、皆で物語を作ってお話が進んでいくものだと理解しているのでチームワークをさらに深めていきたい」と意気込む。

砂川800

プッチーニの音楽について、佐渡は「若い人たちのエネルギーが現れていたり、愛や恋に落ちていく強烈に美しいアリアがあったり、クリスマスの賑やかさなど、情景を描くことに非常に長けていたことに加え、単に情景描写だけではなく、人の心理的な部分や、温度、ミミの身体の状態がどの程度悪いのか、そうしたものまで音楽で描かれていることが非常に面白い。イタリア・オペラの大きな世界観、スケールを持っている作品なので、胸の内側を締め付けられるような愛情というのをたくさん表現できるようにしたい」と語った。

佐渡裕のタクト、米国アカデミー賞受賞デザイナー フェレッティによる舞台、選りすぐりの歌手による上演に期待が集まる。

 

佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2020 歌劇「ラ・ボエーム」

 

【日時・場所】
2020/7/24(金・祝)~8/2(日) 全8 公演 14:00開演
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール

[音楽]ジャコモ・プッチーニ
[台本]ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイジ・イッリカ
(全4 幕/イタリア語上演・日本語字幕付き/新制作)
指揮:佐渡 裕(兵庫県⽴芸術⽂化センター芸術監督)
演出/装置・衣裳デザイン:ダンテ・フェレッティ
演出補:マリーナ・ビアンキ
合唱指揮:シルヴィア・ロッシ
装置:フランチェスカ・ロ・スキアーヴォ
照明:マルコ・フィリベック
衣裳補:⼩栗菜代⼦
装置助手:マッシモ・ラッジ
舞台監督:幸泉浩司
プロデューサー:⼩栗哲家

 

【出演】
<ダブルキャスト>
■7/24(金)、26(日)、29(水)、8/1(土)
ミミ:フランチェスカ・マンツォ
ロドルフォ:リッカルド・デッラ・シュッカ
ムゼッタ:エヴァ・トラーチュ
マルチェッロ:グスターボ・カスティーリョ
ショナール:パオロ・イングラショッタ
コッリーネ:エウゲニオ・ディ・リエート
べノア/アルチンドーロ:ロッコ・カヴァッルッツィ
パルピニョール:清原邦仁

■7/25(土)、28(火)、30(木)、8/2(日)
ミミ:砂川涼子
ロドルフォ:笛田博昭
ムゼッタ:ソフィア・ムケドリシュヴィリ
マルチェッロ:髙田智宏
ショナール:町 英和
コッリーネ:平野 和
べノア/アルチンドーロ:片桐直樹
パルピニョール:水口健次

合唱:ひょうごプロデュースオペラ合唱団、ひょうご「ラ・ボエーム」合唱団、
ひょうごプロデュースオペラ児童合唱団

管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

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佐渡 裕(指揮/兵庫県立芸術文化センター芸術監督)
Yutaka Sado,Conductor/Artistic Director of Hyogo Prefectural Arts Center

佐渡裕プロフ

京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。
1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝。パリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ケルン放送交響楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、北ドイツ放送交響楽団等欧州の一流オーケストラに多数客演を重ねている。

2015年9月より、オーストリアで100年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。オペラ公演では2003年エクサン・プロヴァンス音楽祭「椿姫」、2007年オランジュ音楽祭「蝶々夫人」、トリノ王立歌劇場の2010年「ピーター・グライムズ」、12年「カルメン」、15年「フィガロの結婚」など多くの実績を持つ。兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者。CDリリースは多数あり、最新盤はトーンキュンストラー管弦楽団を指揮した11枚目のCD「ハイドン:天地創造」(19年7月発売)。著書に「僕はいかにして指揮者になったのか」(新潮文庫)、「棒を振る人生~指揮者は時間を彫刻する~」(PHP 新書/PHP 文庫)等。

ダンテ・フェレッティ(演出/装置・衣裳デザイン)
Dante Ferretti, Direction/Set and Costume design

演出家

アカデミー賞授賞式でのフェレッティと夫人で装置家のロ・スキーアヴォ

1943年マチェラータ(イタリア)生まれの美術デザイナー、アートディレクター、衣裳デザイナー。キャリアを通して、ピエル・パオロ・パゾリーニ、フェデリコ・フェリーニ、テリー・ギリアム、フランコ・ゼフィレッリ、アンソニー・ミンゲラ、マーティン・スコセッシ、ティム・バートン、ブライアン・デ・パルマら、米国、イタリア両国の偉大な映画監督作品で美術デザインを手がける。装置デザイナーである夫人のフランチェスカ・ロ・スキアーヴォとは頻繁に協働している。

フランコ・ゼフィレッリの薫陶を受け、彼のもと5本の映画に参加。パゾリーニ作品にも5本参加した。後にはマーティン・スコセッシと密に仕事をし、彼の最新作8本のうち7本でデザインを手掛けた。1992年にはリリアーナ・カヴァーニ演出によるミラノ・スカラ座「椿姫」で、2008年にはデヴィッド・クローネンバーグ演出、ハワード・ショア音楽による「ザ・フライ」(パリ・シャトレ座)で装置デザインを務めた。米国アカデミー賞美術賞を「アビエイター」「スウィーニー・トッド」「ヒューゴの不思議な発明」で受賞したほか10作品にノミネート。また、「クンドゥン」で衣裳デザイン賞にノミネートされた。そのほか英国アカデミー賞を4度、伊ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を5 度、伊ナストロ・ダルジェント賞を13度、伊プレミオ・キネアルティ・ラ・キオーマ・ディ・ベレニケを3 度受賞。ローマ近郊のテーマパーク“チネチッタ・ワールド”の美術デザイナーの一人に選ばれた。2015年のミラノ万博では群像の製作を委託された。

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