日本フィルハーモニー交響楽団

©山口敦

1956年6月創立、楽団創設の中心となった渡邉曉雄が初代常任指揮者を務めました。当初より幅広いレパートリーと斬新な演奏スタイルで、ドイツ・オーストリア系を中心としていた当時の楽壇に新風を吹き込み、大きなセンセーションを巻き起こしました。1962年には世界初のシベリウス交響曲全集(渡邉曉雄指揮)を録音。また、イゴール・マルケヴィチ、シャルル・ミュンシュなど世界的指揮者が相次いで客演、1964年にはアメリカ・カナダ公演で大成功を収め、創立から10年足らずの間に飛躍的な発展を遂げました。また2008年から8年間にわたり首席指揮者を務めたロシアの名匠アレクサンドル・ラザレフとともに2011年には香港芸術節にも参加。アジアへとその活動の場を広げ、演奏面でも飛躍的に演奏力が向上したと、各方面より高い評価をいただいております。

 

創立期から始められた「日本フィル・シリーズ」は、幅広い層の邦人作曲家への委嘱シリーズで、現在までに40作が世界初演されており、すでに“古典”と呼ぶにふさわしいポピュラリティを獲得したものも少なくありません。日本の音楽史上でも例のない委嘱制度として、広く評価されております。

 

2016年に創立60周年を迎えた日本フィルは、この歴史と伝統を守りつつ、さらなる発展を目指し、現在次の3つの柱で音楽を通じて文化を発信しております。

 

Ⅰ オーケストラ・コンサート  
東京・横浜・さいたま・相模大野で定期演奏会を開催し、年間公演数は例年150回前後。2016年9月に首席指揮者にフィンランドの気鋭ピエタリ・インキネンを迎え、桂冠指揮者兼芸術顧問アレクサンドル・ラザレフ、桂冠名誉指揮者小林研一郎、正指揮者山田和樹、そしてミュージック・パートナー西本智実という充実した指揮者陣を中心に、個性的で魅力的な企画を提供し、さらなる演奏力の向上を目指しています。

 

Ⅱ エデュケーション・プログラム
1975年より始まった親子コンサートの草分けである「夏休みコンサート」には毎年2万人を超えるご家族にご来場いただいております。また、コミュニケーション・ディレクターのマイケル・スペンサーとともに、15年以上にわたり行ってきた創作・体験的ワークショップは、日本のオーケストラにおける先駆的な取り組みであり、今後とも先進性を活かして広く発信して参ります。子どもたちの音楽との出会いの場を広げるだけではなく、音楽を通したコミュニケーションを提案するこの活動は、企業の社員教育の観点からも注目されております。

 

Ⅲ リージョナル・アクティビティ(地域活動)
長年にわたり全国各地で地域との協働を実現し、音楽を通してコミュニティの活性化と地域文化の発展に寄与してまいりました。九州全県で行う九州公演は1975年より、その歴史を刻んでいます。地元のボランティアの皆さんとプログラムから販売まで話し合う、まさに地域とともに作り上げる公演です。さらに、1994年より東京都杉並区と友好提携を結び、「杉並公会堂シリーズ」や「60歳からの楽器教室」など地域に密着した活動を展開しています。

 

2011年4月より、聴衆からの募金をもとにボランティア活動「被災地に音楽を」を開始。2019年12月までにその公演数は293回を数えております。

 

「市民とともに歩む」日本フィルは個人会員、法人会員をはじめとする実に幅広い方々からのサポートをいただいております。一人一人のお客様との対話を大切に、これからもより一層の演奏水準の充実を目指し、お客様と感動を共有してまいります。

(2019年12月現在)

指揮者

  • 日本フィルハーモニー交響楽団 ピエタリ・インキネン
    ©堀田力丸

    首席指揮者

    ピエタリ・インキネン Pietari INKINEN

    世界各地で活躍の場を広げ注目を集めるインキネン。現在、日本フィルハーモニー交響楽団、プラハ交響楽団、ルートヴィヒスブルク城音楽祭の首席指揮者を務める。2017年9月よりザールブリュッケン・カイザースラウテルンドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任。
    これまでに、ニュージーランド交響楽団音楽監督を8年間務めたほか、ミュンヘン・フィル、スカラ・フィル、ロサンゼルス・フィル、イスラエル・フィル、バイエルン放送響、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、フランス放送フィル等に客演。オペラの分野においても、ベルリン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場をはじめ、各国のオペラ・ハウスに出演。 
    昨シーズンは、ケルン・ギュルツェニヒ管、ハンブルク北ドイツ放響、フィンランド歌劇場の《蝶々夫人》におけるデビュー、BBCフィル、フィンランド放響等と共演し好評を博した。
    2013年9月オペラ・オーストラリアによるワーグナーの《ニーベルングの指環》(ニール・アームフィールド演出)の初演を指揮。メディアでも絶賛され、翌14年8月のヘルプマン賞において「オペラ・オーストリアの《リング・サイクル》ベスト・ミュージック・ディレクション」に選出された。このプロダクションは、2016年11月から12月にかけて3チクルスが再演され、インキネン指揮による演奏は再度絶大なる評価を受けた。
    録音は、ニュージーランド交響楽団『シベリウス:交響曲全曲』、日本フィルハーモニー交響楽団『シベリウス:交響曲全集』『ブラームス:交響曲第1番』(ナクソス)、サイモン・オニール/ニュージーランド交響楽団『父と子~ワーグナー:アリア集』(EMI)などがある。
    フィンランド出身。シベリウス音楽院でヨルマ・パヌラ、レイフ・セーゲルスタムらに、また、ヴァイオリンをザハール・ブロンに師事。

  • 日本フィルハーモニー交響楽団 アレクサンドル・ラザレフ
    ©浦野俊之

    桂冠指揮者兼芸術顧問

    アレクサンドル・ラザレフ Alexander LAZAREV

    ロシアを代表する指揮者の一人。2008年9月から8年間にわたり日本フィルの首席指揮者を務め、2016年9月に桂冠指揮者兼芸術顧問に就任。首席指揮者就任とともに3年に渡る「プロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクト」を開始し、1秒たりとも無駄にしない徹底したリハーサルで演奏水準を引き上げ、「ラザレフ効果」と評される。2011年9月より「ラザレフが刻むロシアの魂」をスタート。2013年6月に最終章を迎えた「SeasonⅠラフマニノフ」では、初回から作曲家の人間性にまで深く迫っていく解釈と、妥協なくその解釈を表現させる演奏で会場を熱狂させ、歴史的な作品の評価までをも変える名演となり、センセーショナルなまでの高評価を得た。続く「SeasonⅡスクリャービン」では、日本人には馴染みの薄いスクリャービンの独特な色彩的・神秘的な世界を分かりやすくダイナミックに提示。2014/2015シーズンからは2年にわたり「SeasonⅢショスタコーヴィチ」を展開。すさまじい音圧と作曲家が憑依したような演奏が話題となった。2016/2017シーズンより「SeasonⅣグラズノフ」が始まる。
    モスクワ音楽院でL.ギンズブルグに師事、同音楽院を首席で卒業。1971年にソ連国際指揮者コンクールで第1位、翌年にはベルリンでのカラヤン指揮者コンクールで第1位とゴールド・メダルを受賞。1987年から1995年にかけてボリショイ劇場の首席指揮者兼芸術監督を務める。両タイトルを一人の指揮者が兼任したのは30年ぶり。この間、東京(1989年)、ミラノ・スカラ座(1989年)、エディンバラ音楽祭(1990、91年)、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(1991年)などの演奏旅行では前例のないプログラムを実行し高い評価を得ている。グリンカ《イワン・スサーニン》、チャイコフスキー《オルレアンの少女》、リムスキー=コルサコフ《ムラーダ》など、同歌劇場における秀作は映像化されている。さらにボリショイ管とは、ラフマニノフ《交響曲第2番》やショスタコーヴィチ《交響曲第8番》などのロシアの交響曲を含む数々の録音をEratoから出しており、大絶賛をあびている。
    数多くのCDをリリースしており、ボリショイ管とはエラート、メロディア、ヴァージン・クラシックスで、BBC響、ロンドン・フィル、ロイヤル・スコッティッシュ・ナショナル管等との録音がある。日本フィルとの録音も多く、最近ではオクタヴィア·レコードより『ラフマニノフ:交響曲全集』、ショスタコーヴィチの交響曲『第4番』、『第11番』、『第8番』に続き、『第7番《レニングラード》』が2016年7月に発売されている。

  • 日本フィルハーモニー交響楽団 小林研一郎
    ©山口敦

    桂冠名誉指揮者

    小林研一郎 KOBAYASHI Ken-ichiro

     東京藝術大学作曲科および指揮科を卒業。第1回ブダペスト国際指揮者コンクールでの鮮烈な優勝を飾ったのを皮切りに、世界的に活躍の場を拡げ、現在も国内外の第一線で活躍を続けている。特に、ハンガリーでの活躍は目覚ましく、その功績に対してハンガリー政府よりリスト記念勲章、ハンガリー文化勲章、民間人最高位となる星付中十字勲章、ならびにハンガリー文化大使の称号が授与されている。また、国内では文化庁長官表彰、旭日中綬章を受けている。
    作曲家としても数多くの作品を書き、1999年には日本・オランダ交流400年の記念委嘱作品、管弦楽曲『パッサカリア』を作曲、ネーデルランド・フィルで初演されると、聴衆から熱狂的な喝采を以て迎えられた。同作品はそれ以降も様々な機会に再演されている。
    精力的な音楽活動の他に、各種媒体への寄稿などエッセイの執筆も行っており、その繊細で情感豊かな語り口でマルチな才能を発揮している。既刊の書籍には、『指揮者のひとりごと』(騎虎書房)、『小林研一郎とオーケストラへ行こう』(旬報社)がある。
    現在、日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者、読売日本交響楽団特別客演指揮者、九州交響楽団の名誉客演指揮者等を務めるほか、東京文化会館音楽監督、長野県芸術監督団音楽監督、東京藝術大学・東京音楽大学・リスト音楽院名誉教授の要職にある。

    (オフィシャルウェブサイト  http://www.it-japan.co.jp/kobaken/

  • 日本フィルハーモニー交響楽団 山田和樹
    ©山口敦

    正指揮者

    山田和樹 YAMADA Kazuki

    第 51 回(2009 年)ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。ほどなく BBC 交響楽団を指揮してヨーロッパ・デビュー。同年、ミシェル・プラッソンの代役でパリ管弦楽団を指揮し、すぐに再演が決定するなど、破竹の勢いで活動の場を広げている。2010 年には小澤征爾の指名代役としてスイス国際音楽アカデミーで、2012 年 8 月にはサイトウ・キネン・フェスティバル松本でオネゲル作曲「火刑台上のジャンヌ・ダルク」を指揮。同 8 月にはサントリー芸術財団サマーフェスティバルでクセナキス作曲《オレステイア三部作》も指揮し、好評を博した。2014 年 7 月にはスイス・ロマンド管弦楽団 15 年ぶりとなる日本公演を、2016 年にはバーミンガム市交響楽団日本公演を成功に導き、2015 年~2017 年 には 3 年間全 9 回に渡る『山田和樹 マーラー・ツィクルス』を実施。2015 年春にパリ管弦楽団と行ったオネゲル作曲オラトリオ《火刑台のジャンヌ・ダルク》も絶賛された。2017 年 2 月にはベルリン・コーミッシェ・オーパーで《魔笛》を指揮し高い評価を得た。これまでに、パリ管弦楽団、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、バーミンガム市交響楽団、ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団、エーテボリ交響楽団、ローザンヌ室内管弦楽団、トーン・キュンストラー管弦楽団、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団など各地の主要オーケストラで客演を重ねている。2014/2015 年にはアメリカデビュー、2015/2016 年にはオセアニアでデビューするなど、活動は世界各地に広がっている。バート・キッシンゲン音楽祭、モンペリエ音楽祭、マントン音楽祭、ブザンソン国際音楽祭、ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭など、ヨーロッパ の音楽祭への出演も多数。日本国内の主要オーケストラに客演している。 2016/17 シーズンから、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督兼音楽監督に就任。2010 年から 2017 年までスイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者を務めた。日本では、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者を務める他、東京混声合唱団音楽監督兼理事長、学生時代に創設した横浜シンフォニエッタの音楽監督としても活動している。2018 年 4 月から読売日本交響楽団首席客演指揮者に就任。2018/2019 シーズンからバーミンガム市交響楽団の首席客演指揮者に就任することが発表された。東京藝術大学指揮科で小林研一郎・松尾葉子の両氏に師事。2010 年横浜文化賞文化・芸術奨励賞、2011 年出光音楽賞受賞。2012 年渡邉曉雄音楽基金音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、文化庁芸術祭賞音楽部門新人賞受賞。2016 年には実行委員会代表を務めた「柴田南雄生誕 100 年・没後 20 年記念演奏会」が平成 28 年度文化庁芸術祭大賞、2017 年には『山田和樹マーラー・ツィクルス』などの成果に対して、第 67 回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した。著書に『山田和樹とオーケストラのとびらをひらく』(アリス館)。録音も積極的に行っており、ペンタトーン・クラシックスよりスイス・ロマンド管との CD を、オクタヴィア・レコードよりチェコ・フィル、日本フィル、横浜シンフォニエッタ、仙台フィル等との CD をリリース。東京混声合唱団との CD も多数。メディアへの出演も多く、音楽を広く深く愉しもうとする姿勢は多くの共感を集めている。ベルリン在住。

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