2023年06月19日
『ウエスト・サイド・ストーリー』来日上演記念特集 ~ 作曲者 バーンスタインに迫る

2023年夏、ブロードウェイからミュージカルの最高峰
『ウエスト・サイド・ストーリー』が来日!
7月5日(水)から東京にて開幕し、群馬・大阪と8月まで来日上演が決定しているブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』。今回ひびクラでは、『ウエスト・サイド・ストーリー』の作曲者であるバーンスタインを特集!日本のクラシック界にも深い関わりのある彼と彼が生み出した楽曲について掘り下げてみた。
不滅の傑作ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の作曲者レナード・バーンスタイン(1918-90)は、指揮者、ピアニスト、テレビ解説者、著述家、教育者としても活躍した超人的音楽家であり、アメリカ音楽界最大のヒーローでもあった。生前は、帝王カラヤンと並ぶスター指揮者のイメージが強く、実際ニューヨーク・フィルの音楽監督として名声を確立後、ウィーン・フィル等と名演を展開。エネルギッシュな指揮ぶりで大人気を博した。しかし没後は作曲家としての業績がクローズアップされ、多くの作品が世界中で演奏されている。今や彼は、20世紀半ば以降の世界を代表する作曲家と言うべき存在なのだ。
ちなみに日本との関係も深く、1961年ニューヨーク・フィルと共に東京文化会館の柿落とし公演を行って以来、指揮者として数多の名演を残したほか、1985年には「広島平和コンサート」で感動を与え、1990年には札幌で「パシフィック・ミュージック・フェスティバル」を開始して青少年の育成に尽くした。また、小澤征爾をはじめ、佐渡裕、大植英次といった著名指揮者の師匠としても知られている。
作曲家としてのバーンスタインは、硬軟両面で実績を残した。クラシック系では、交響曲第1番『エレミア』、第2番『不安の時代』、第3番『カディッシュ』や『ミサ曲』等の大作を発表。ジャズを用いた『不安の時代』や、ヴァイオリンをフィーチャーした『セレナード』、軽妙な管弦楽曲『ディヴェルティメント』等は、21世紀に入って頻繁に演奏されている。だが、より大衆の支持を得たのは、ポピュラー系の作品だった。「序曲」が生前から大定番化しているミュージカル『キャンディード』や、近年「3つのダンス・エピソード」が人気を集めているミュージカル『オン・ザ・タウン』然り。その頂点に立つ代表作が『ウエスト・サイド・ストーリー』である。
©️Johan Persson
1944年、バーンスタインは振付・演出家ジェローム・ロビンスと組んでバレエ『ファンシー・フリー』を創作した。その成功を受けて同作はミュージカル『オン・ザ・タウン』となって大ヒット。これを基にフランク・シナトラ主演の映画『踊る大紐育』も制作された。1953年には同じく『ワンダフル・タウン』の音楽を担当。これもヒットしたが、1956年の『キャンディード』は、高尚すぎるとみなされ、短期間で終了した(後にリバイバル上演されて人気を得ている)。そこで再びロビンスから声をかけられて創作したのが、1957年の『ウエスト・サイド・ストーリー』だった。
この作品は、ワシントンとフィラデルフィアで試演後、ブロードウェイで700回を超える破格のロングランを記録。1961年にはロバート・ワイズ監督のもとで映画化され、10部門でアカデミー賞を獲得した。その映画で世界に広く浸透。現在に至るまで様々な団体の舞台に何度もかけられ、2022年にはスピルバーグ監督のもとで再映画化されて話題を呼んだ。
物語は、ニューヨークの貧民街を舞台にした、「ロミオとジュリエット」の翻案版。2つの不良集団=地元のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団が対立する中、前者のトニーがロミオ、後者のマリアがジュリエットの立場となって、愛の悲劇が展開される。
©️Johan Persson
本作は、ダイナミックなダンスも見どころだが、何と言っても音楽が最高だ。順不同で挙げると、「プロローグ」「マリア」「ワン・ハンド・ワン・ハート」「サムホエア」「マンボ」「トゥナイト」「アメリカ」「アイ・フィール・プリティ」「クール」等々、キラ星のごとき名曲の宝庫。愛のデュエット「トゥナイト」をはじめ、スタンダード・ナンバーとなっている曲も多い。作曲者らが編曲した「シンフォニック・ダンス」もオーケストラの定番となっており、中でも掛け声が入る「マンボ」はコンサートを大いに盛り上げている。
バーンスタインのメロディ・メーカーとしての才能と楽曲構成のセンスが最大限に発揮されたその音楽には、甘美さ、悲哀、高揚や、沸き立つリズム、スタイリッシュで華麗なサウンド等々、あらゆる魅力が詰まっている。ゆえに、ただ音楽に浸っているだけで極上の時間が過ごせること間違いなしだ。まして今回、本場ブロードウェイの迫真的な舞台と共にそれを満喫できるとなれば、むろん見逃すことはできない。
文・柴田克彦
【公演情報】ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』
原案
ジェローム・ロビンス
脚本
アーサー・ロレンツ
音楽
レナード・バーンスタイン
作詞
スティーブン・ソンドハイム
演出
ロニー・プライス
出演
ブロードウェイのオーディションによって選ばれたダンサー
公演スケジュール
7/5(水)~7/23(日) 東京・東急シアターオーブ
7/31(月)~8/2(水) 群馬・高崎芸術劇場 大劇場
8/5(土)~8/6(日) 大阪・オリックス劇場
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