2020年12月25日
はじめてのクラシック ~ 交響曲第九番の名曲5選

はじめてのクラシックでは、クラシック音楽入門としておすすめの曲をご紹介!
年の瀬も近づいてきましたが、師走といえば鍋と第九ですね。ドイツ語で「フロイデ・シェーネル・ゲッテルフンケン」と皆で歌うベートーヴェンの「第九」、通称「合唱」は日本ではいつからか年末の風物詩となりました。
第九を聴きつつ年末気分を堪能されている紳士・淑女の皆様は、ベートーヴェンの作品以外にはどんな交響曲第9番があるかご存じでしょうか? 今回は偉大な作曲家たちの美しき第9番をご紹介します。
※記事の中でご紹介しているCDには、動画内の演奏は収録されておりません。
交響曲第9番には「第九の呪い」があると言われていました。巨匠・ベートーヴェンが、交響曲第10番を完成せずに亡くなったので「第9番を作曲すると命を落とす」というジンクスが広まったそうです。
マーラーは呪いを恐れて9番目の作品に番号をつけず「大地の歌」としましたが、後に手掛けた10番を未完のまま生涯を閉じ、ブルックナーは9番目の交響曲の第四楽章を完成させる前に亡くなりました。呪いが広まる前を振り返ると ”交響曲の父”と呼ばれたハイドンは全106曲(!)、短命だったモーツァルトは番号付きの交響曲だけで41曲と、ベートーヴェンの大先輩は多くの交響曲を残していたのでした……!
1. ドヴォルザーク / 交響曲第9番 ホ短調 Op.95「新世界より」
三大交響曲の一つ、放課後に流れていた懐かしのあの曲です。コンサートで頻繁に演奏されるほど人気が高く、耳に残るメロディが多く盛り込まれています。ベートーヴェンの交響曲第5番《運命》、シューベルトの交響曲第7(8)番《未完成》と並び、「三大交響曲」と呼ばれる有名な作品ですね。特に第二楽章は「遠き山に日は落ちて」の歌詞で知られる『家路』の元にもなり、学生時代の放課後を思い出すメロディが印象的です。
第四楽章も印象的で、序奏は機関車の出発をイメージさせ、勇ましい旋律は出陣のような雰囲気。映画「ジョーズ」のBGMと酷似しているとも。
激しい曲調から華やかな雰囲気へうつろい、静寂の中に悲しみや郷愁が感じられます。ドヴォルザークが、「新世界」のアメリカに滞在したときに作曲されたのだとか。その時の衝撃と郷愁の対比が色濃く描かれています。目が覚めるような壮大なラストも必聴です。
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発売日 : | 2013/05/15 | レーベル : | ユニバーサル ミュージック | フォーマット : | CD |
2. マーラー / 交響曲第9番ニ長調
万能感と無力感に包まれる、マーラーの最高傑作! 序奏から指揮を振ってみたくなる優美な旋律に心を奪われます。全編を通して死の予感が漂い、楽譜の最終章の最後にersterbend(死に絶えるように)と書き残されていたため「告別の歌」とも称されてきました。録音作品も多く、大きな節目に演奏されてきた作品です。
第一楽章からそれぞれのパートが、複雑かつ柔らかな音色を奏で、繊細なハーモニーは神々しく、つい目を瞑ってしまうほど。第二楽章は、なんとも優雅。馬に乗りながら、木々のさざめき、小川のせせらぎ、湿度をはらんだ風を感じ、自然の中を駈け抜ける。まるで桃源郷のようですが、夢の中のような急展開が繰り広げられます。圧倒的な迫力に痺れる第三楽章から、第四楽章の静謐なエンディングへ。まさにマーラーの最高傑作、重厚で深淵な世界感に浸れるはずです。
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発売日 : | 2016/09/07 | レーベル : | ユニバーサル ミュージック | フォーマット : | SHM-CD |
3. ショスタコーヴィチ / 交響曲第9番変ホ長調 Op.70
軽妙かつ風刺が効いた“ 勝利”のショート交響曲は、ロシア(旧ソ連)の作曲家、ショスタコーヴィチが第二次世界大戦後、勝利の交響曲として手掛けた作品です。
前作の7番「レニングラード」や8番が60分超えの重厚な作品だったため、ベートーヴェンのような超大作が期待されました。ところが完成したのは、過去の作風とは真逆の交響曲。軽快な序奏から始まり物憂げなクラリネットの旋律、高圧的なファンファーレに続き、終盤は滑稽なパレードを思わせます。賑やかな雰囲気から、突然のフィナーレまで全編30分ほど。ちなみにベートーヴェンの「第九」はおおよそ74分なので、その半分以下の短編でした。あまりに癖の強い曲だったため、国を批判していると疑惑をかけられてしまい、その後の作曲家人生にも大きな影響があったのだとか。短いながらも尖った個性と異国情緒が漂い、繰り返し聴きたくなる魅力的な一曲です。
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発売日 : | 2018/12/19 | レーベル : | ユニバーサル ミュージック | フォーマット : | CD |
4. ブルックナー / 交響曲第9番ニ短調 WAB109
荘厳で甘美な響きに包まれる、ブルックナーの最後の交響曲。柔らかな音色からはじまり、自然の悠大な風景ようなゆったりとした旋律から、力強く生命力溢れる曲調へ。最終章の楽譜には「愛する神に捧げる」と記されており、神秘的で輝かしいファンファーレが印象的です。
冒頭の「第九の呪い」で触れたとおり、この第四楽章を作成中にこの世を去ったため、演奏会や録音では第一楽章~第三楽章のみで演奏されています。ただブルックナーは、この9番が完成しなかったら自身の合唱曲《テ・デウム》を第四楽章に充てて、締めくくるようにと話したこともあったのだとか。このことから「第九」のように、合唱付きのフィナーレを作り上げたかったことが伺えます。ブルックナーは長くて難解とも言われますが、緻密な中に透明感のあるハーモニーに身をゆだねてみてください。美しき未完成の交響曲は奥が深く、淀んだ心を浄化してくれるでしょう。
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発売日 : | 2014/06/18 | レーベル : | ワーナーミュージックジャパン | フォーマット : | CD |
5. ベートーヴェン / 交響曲第9番 ニ短調 Op.125「合唱付き」
暗闇に包まれた世界に光を!そんなメッセージが込められたお馴染みのこの曲は、光と闇が交錯するベートーヴェンの人生を描いたよう。愛する人との別れや苦しみ、難聴という病、あらゆる苦難の果てにベートーヴェンが生み出したのが第九です。
作品が完成した1824年以前に、交響曲に歌を入れた人はおらず、斬新な構成に多くの人が驚嘆し感激しました。第四楽章には、ドイツの詩人シラーの詩『歓喜に寄す』の一節を歌詞に取り入れており、分断された世界を音楽で一つに結び付けるという思いが込められているのです。幾重もの苦しみと悲しみを越え、人類の平和と歓び、自由と平等を願った渾身の超大作、この一年を振り返りつつ聴いてみてはいかがでしょうか。
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発売日 : | 2020/07/03 | レーベル : | Harmonia Mundi | フォーマット : | CD |
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