2019年05月29日

アレクサンデル・ガジェヴ(ピアノ)~ひびクラinterview

アレクサンデル・ガジェヴ

2015年、「第9回浜松国際ピアノコンクール」で見事優勝に輝き、世界で注目を集めている若手ピアニストの1人、アレクサンデル・ガジェヴさんにインタビュー。音楽のことからプライベートなことまでたくさんの質問に答えていただきました。「第2の家」と呼ぶほど日本好きなガジェヴさんの素顔は、とてもフレンドリー。5月15日、「カワイ表参道」の「パウゼ」で開催したリサイタルの終演後には、日本の若手アーティストに囲まれ楽しくお話ししていましたよ。ラフマニノフを弾くからにはやはり手は大きいのかな…と思ったところ、こんなお茶目なポーズを取ってくださいました。

 

ー まずは今日(5月15日)のリサイタルについて伺います。発表されていたプログラムから曲順が変わりましたね? なぜですか?

実はもうすぐ「チャイコフスキー国際コンクール」に出場することが決まっています。1次予選で弾く曲を、今回のリサイタルの前半で同じ順番で弾いてみたかったのです。

 

ー 5月4日に「ラ・フォル・ジュルネ」に出演してから今日まで、日本に滞在していたのですか?

(フフッと笑って)いえ、一度帰国してすごくクレイジーに飛行機で飛び回っていました。ベルリンでコンサートに出演して、ロンドンでミーティングに参加して…。それを1日でこなしたり…という結構過酷なスケジュールをこなしていました。できることならずっと日本にいたかったです。

 

ー それは大変でしたね。でも、その間には「BBC New Generation Artist 2019-2021」(※)に選ばれるといううれしいこともありました。このニュースを聞いたときはどちらにいらっしゃったのですか?

普段はベルリンに住んでいるのですが、あのときはちょうどイタリアの実家にいました。もう最高にうれしかったですよ。母もすごく喜んでくれて。あれは、本当に素晴らしいひとときでしたね。

※「BBC New Generation Artist」とはイギリスのラジオ局「BBC radio 3」が若き音楽家の育成を目指して、1年ごとに選出する音楽家たちのこと。例年、選出されるのは6,7人。2年間単位でBBC交響楽団との共演、音楽祭への出演、録音の機会など、多数の活動の場が提供される。

 

ー 「第9回浜松国際ピアノコンクール」では優勝(&聴衆賞)を飾り、以降も精力的にコンクールへの出場を続けています。ガジェヴさんの最終的なゴールとは?

常に向上し続けること。演奏したことのないコンサートホールで演奏し、新たな観客に聴いてもらうこと。あとは個人的にモスクワ音楽院のホールで演奏するのが夢です。

 

ー 「ラ・フォル・ジュルネ」では「浜松国際ピアノコンクール」で優勝した際に演奏した、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を再び弾いてくれました。ガジェヴさんが選んだのですか?

そうです。弾きたいコンチェルトとして、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番がありました。その他に、リサイタルとヴァイオリンとのデュオも希望していましたが、最終的に選ばれたのがあの曲でした。すごくパワフルでエネルギッシュ、かつ幻想的な部分もあるし、「ここだ!」という聴かせどころにもあふれていて大好きな曲です。また弾くことができてハッピーでした。コンクールのときよりも意識したのは、最後はテンポを上げすぎずにシャープさを出すということです。リハーサルはとても短かったのですが、指揮のリオ(・クオクマン)と演奏を創り上げていくのは楽しい経験になりました。

 

ー 以前はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を弾くことが夢と語り、昨年「第10回浜松国際ピアノコンクール開催記念ガラ・コンサート」でその夢を叶えました。次は何の曲に挑戦したいですか?

リストの超絶技巧練習曲の全曲ですね。

 

ー ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番といえば…の質問なのですが、映画『シャイン』を観たことはありますか?

『シャイン』! もちろんです。ピアニストの話としては哀れを誘う物語だと思います。12歳くらいの頃に観たときは、映画の中に閉じ込められるような苦しさがありました。けれど、今は演奏の質の方が気になってしまいます。

 

ー インスタグラムの写真に「#japansecondhome」(日本は第2の家)というハッシュタグを付けているのを見ました。日本は好きですか?

大好きです!今回は10回目の来日なんです。初めて来日したときと違って、もう色んな人たちを知っているし、お腹が空いたら自分で食べに行くこともできます。どこで食べてもおいしい。日本のことを本当に我が家のように感じていますよ。

アレクサンデル・ガジェヴ

アレクサンデル・ガジェヴ

ガジェヴさんのインスタグラムとFacebookより

ー 日本を好きと言ってもらえてうれしいです。さて、ここからは短い質問をたくさんさせてください!

もちろん、どうぞ!

 

ー 好きな日本食は?

トンカツ

 

ー 日本の好きな街は?

東京

 

ー 日本の好きな場所は?

上野公園

 

ー 好きな色は?

ブラック

 

ー 猫派? 犬派?

ずっと犬派です。

 

ー インドア派? アウトドア派?

場合によるという感じです。どちらでもありますね。

 

ー 好きなピアニストは?

故人ならスヴャトスラフ・リヒテル、存命のピアニストなら、ミハイル・プレトニョフ。

 

ー ガジェヴさんの音楽人生に影響を与えた人は?

(しばし悩んでから)多分、ラフマニノフですね。彼の性格、録音、インタビュー、作品、全部に影響を受けています。

 

ー コンサートには行きますか?

すごくよく行きます。特にオペラ。

 

ー 映画をよく観ますか?

あまり観ませんね。

 

ー 芸術性を高めるための趣味はありますか?

即興演奏です!毎日やっています。あとは、自然の中を歩くこと。読書もしますし、考え事をするのも好きです。

 

ー 手に危険なことは避けていますか? 例えば包丁を使って料理をするなど。

特に避けてはないし、恐れているということもないです。時々料理をすることもあります。

 

ー 何か国語を話しますか?

5か国語です。イタリア語、英語、ドイツ語、スロベニア語、ロシア語。日本語も学んでみたいと思っています。挑戦するって約束しますよ!

 

ー 誕生日はいつですか? どこを見ても1994年としか書いてないのですが…。

12月23日です。前の天皇陛下と同じ誕生日なんです。(さすが日本通!)

 

ー 楽譜の暗記はどのようにするのですか?

アプローチの方法はいっぱいあります。時間がないときは、ただ楽譜とにらめっこして覚えたり、時間があるときは繰り返し、繰り返し、弾き続けて覚えたり。録音をじっくり聴くこともあるし、ハーモニーやテーマがどのように展開しているのかを細かく分析することもあります。

 

ー 色々と質問に答えてくださってありがとうございました。ガジェヴさんの日本語版Wikipediaが作れてしまいそうです!

それ、いいですね。ぼくの初めてのWikipediaページは日本語版!光栄です。ぜひURLを送ってくださいね。(日本語圏ではない)みなさんには何が書いてあるかわからないだろうけど、拡散しますよ。おもしろい!でも、英語版は作らないでくださいね。そうすれば、多くの人にとってぼくの情報はまだ秘密ということですから。

 

ー 最後に音楽には関係ありませんが、質問させてください。ガジェヴさんのその美しいグレイヘアはいつからですか?

(アハハ!と笑って)12歳になってすぐに生えてきました。だから人生の半分がそうということですね。

 

ー 日本のファンの方にメッセージをお願いします!

もっともっと頻繁に日本で演奏ができたらいいなと思っています。いつも、みなさんにお会いできるのがうれしくてしかたないんです!

 

文・撮影/賀来比呂美

 

アレクサンデル・ガジェヴプロフ

アレクサンデル・ガジェヴ
Alexander Gadjiev, Piano

【インスタグラムアカウント】@alexander.gadjiev

1994年、イタリア・ゴリツィア市に生まれ、音楽家である両親の指導で5歳からピアノを始める。10歳で初リサイタルを開いたのち、イタリアとスロベニアでソロ・リサイタルやオーケストラとの共演を行った。
多くの演奏活動を行い、2012年にはイタリア・チェゼーナのブルーノ・マデルナ音楽院を首席で卒業。2013年秋よりザルツブルク・モーツァルテウム大学修士課程にてP.ギリロフに師事。
2014年6月、ジーナ・バッカウアー国際コンクールのセミ・ファイナリストに、また8月には第60回F.ブゾーニ国際コンクールのファイナリストとなり、2015年には、海老彰子、M.アルゲリッチ、S.ババヤン、P.ネルセシアン等が審査員に名を連ねた第9回浜松国際ピアノコンクールにて弱冠20歳で優勝、および聴衆賞を受賞した。
同年フェニーチェ歌劇場でY.テミルカーノフ指揮のもとショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を演奏、スロヴェニア・フィルハーモニックホールでデビューコンサートを開催。
最新CDはAcousenceレーベルより2017年秋にリリースされた「リテラリー・ファンタジー」と題するシューマンとリストの作品集。

シューマン:クライスレリアーナ、リスト:巡礼の年 第2年『イタリア』より
シューマン:クライスレリアーナ、リスト:巡礼の年 第2年『イタリア』より
アレクサンデル・ガジェヴ
発売日 : 2017/11/25
レーベル : Acousence
フォーマット : CD
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