2019年06月21日

新日本フィル×日大一高演劇部『ロメオとジュリエット』~ひびクラinterview

新日本フィル×日大一高演劇部

あなたは、初恋を覚えていますか?もろく儚い思い出が蘇る、上岡敏之指揮・新日本フィルハーモニー交響楽団と日本大学第一中学・高等学校演劇部のコラボレーション。プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』が若い息吹との出会いで新しい風を生み出します。 初めてのオケとの共演に向けて稽古中の日大一高演劇部のみなさんにインタビュー。

 

日大一高演劇部のみなさん


 

ロメオ役
原田秀道さん(大学3年生・20歳)
好きな俳優:山崎育三郎
●演劇部在籍時に部長を務めていたOBの原田さんは、顧問の小野先生に「ロメオ役は彼しかいない」と言わしめるほどの実力をもつ超爽やかイケメン。大学では音楽活動もしているそうで、俳優とミュージシャンの二足のわらじで活躍する日も近い? ひびクラ女性編集長も「ずーっと見てられる♡」と。

 

ジュリエット役
江間楓香さん(高校3年生・17歳)
好きな劇団:キャラメルボックス
●ジュリエット役を演じる江間楓香(えま ふうか)さんは、このあとに大学受験を控える高校3年生。すでに部活動は引退しているものの、今回は新入生からOBまでをまじえた「ロメジュリ特別編成」チームにて再合流。はじける笑顔とたしかな演技力で、令和元年にふさわしい”新時代のジュリエット像”を作り上げてくれるはず♪

 

演劇部顧問
小野弘美先生
●ご自身も英語劇の舞台役者をしていたという顧問の小野先生。日々きびしくも温かく生徒たちを𠮟咤激励し、そのリアルな青春群像劇を陰から支える姿は、さながらアットホームな日大一高演劇部の毎日かあさん。

 

 

ー 7月27日(土)にすみだトリフォニーホールで開催される「すみだサマーコンサート2019 ―Chance to Play―」。先日の記者発表会でもアナウンスされていましたが、新日本フィルハーモニー交響楽団と日本大学第一中学・高等学校の演劇部のみなさんとの共演に早くもたくさんの注目が集まっています。どのような公演になるのでしょうか?

小野弘美先生(以下、小野先生):新日本フィルさんがプロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』を演奏し、私たち日大一高が演劇を織り込む形のコラボレーションになります。指揮は音楽監督の上岡敏之さん。今回の演目は『ロメオとジュリエット』ということで、誰もが経験したことのある淡い「初恋」や「恋愛」がテーマになっていて、私たちもどんな公演になるのか今からワクワクしています。

 

ー 普遍的なテーマだけにお芝居をする上で色々と難しい面もあるかと思います。実際にオファーを受けたときは率直にどんな心境でしたか?

原田秀道さん(以下、ロメオ):ちょうど高校演劇大会の地区大会(東京都高等学校文化祭演劇部門地区大会)と時期が重なっていて、しっかり練習できるか不安でしたが、こんなチャンスめったにないし、僕らにとっても必ず良い経験になるから、とにかくやってみようという気持ちの方が大きかったですね。

演劇部は、普段は中1から高2の生徒だけで活動していますが、今回は高3生と僕のような卒業生をまじえた出演者総勢23名の特別編成。月曜日から金曜日までは通常の稽古を行なって、この公演に関しては毎週土曜日を丸一日練習にあてています。

江間楓香さん(以下、ジュリエット):新入生からOBの大学生までが一緒になってやるのは初めての機会。新鮮だし、嬉しいですね。原田先輩ともこれまで1回しか共演したことがなかったので。

ロメオ:そうだよね。僕も、今まであまり共演したことのない人たちと一緒にできるのでとても楽しみです。

 

日大一高

 

ー 日大一高演劇部ならではの強みやアピールポイントというと。

ジュリエット:「演技が良い」、そこに尽きる! ・・・と先生にもよくそう言っていただいているので(笑)。

小野先生:みんなを励ますためにね(笑)。でも、本当に芝居はうまいと思う。演劇経験者の私から見てもそれは断言できます。

ロメオ:指導してくださる外部のコーチも素晴らしい方ばかり。『レ・ミゼラブル』など、みなさん色々な舞台で活躍されているんです。そういった方々の指導を受けることで、しっかり芝居と向き合おうという気持ちが強くなるし、何より学べることがたくさんある。うちは都大会(東京都高等学校文化祭演劇部門中央大会)に行った経験もあるんですよ。

 

ー すごい! 地区大会を突破するのはかなり狭き門らしいですからね。

小野先生:ただ、高校演劇には芝居のうまさだけじゃなくて、オリジナルのストーリーの良さだったりを求められたり、色々な要素が必要なんです。じゃないと上位大会に行けないということもあって。

私たちは「感動がなければ芝居じゃない」というポリシーのもと、一から自分たちで芝居を作っているんです。脚本は生徒たちと私を含めた複数の顧問による共同作業で書き上げていて、観客を笑わせつつも、最後には泣かせる。これがうちの演劇部の最大の特徴だと思います。

今回上演する『ロメオとジュリエット』は、シェイクスピアの古典で、ご存知のとおり総じてシリアスな芝居ですよね。なので最初から最後まで悲劇的なシーンをイメージされるかと思いますが、そこをあえてコメディテイストの軽い感じにして、でも最後にはしっかり泣かせる、そんな日大一高演劇部らしい脚本にしようかなと考えています。脚本は今回私が一任しています。

 

日大一高

 

ー 配役についてもお伺いしたいのですが、まだ決まったばかりなのですよね?

小野先生:主役の2人だけは前から決まっていました。

ジュリエット:当初はジュリエット役のオーディションをやるという話もあったんですけど、最終的に先生じきじきのご指名で決まりました。

小野先生:ジュリエット役の江間さんは、芝居のうまさはもちろん、取り組み方が真面目で信頼できる。途中で諦めないという意志の強さもあるから、この子に任せておけばある程度大丈夫だなと。高3なので受験勉強もあって大変だと思うんですけど、この役は彼女しかいないと最初から決めていました。

ロメオ役の原田くんは、もともと部長をやっていて実力もあるし演技に対する姿勢も素晴らしい。そして、ここが特に重要なんですが、見た目がロメオにぴったり。やっぱりルックスって大事なんだなって(笑)。いや大げさでもなんでもなく、この役をできる人ってなかなかいないんですよ(笑)。

ロメオ:大いに照れます・・・(笑)。

ジュリエット:ふだん先生に面と向かって褒められたことがないので(笑)。

小野先生:2人の背の高さのバランスや並んだときの雰囲気だったり、ペアの相性もあるんですよ。でも軽くリハをした段階で相性はばっちり。2月頃に本決定しました。

 

日大一高

 

ー 『ロメオとジュリエット』は恋愛悲劇の定番中の定番。高校演劇でもこういった王道のラブストーリーはよく題材として取り上げられているのですか?

小野先生:恋愛モノはめったにやらないですね。ましてや、『ロメオとジュリエット』は古い作品ということもあって、うちに限らずどこの演劇部でも今はほとんど扱わない。高校演劇は創作劇が主流なんですよ。脚本にもよりますが、いずれにしても高校生が経験に基づいた形で恋や愛を演技に昇華させるのはなかなか難しいことだと思うんですよね。

ジュリエット:なので不安もあります。恋愛モノの演技経験はゼロに等しいので・・・ 実際に演じてみても、想像していた以上に恥ずかしい(笑)。恥ずかしがっちゃダメだって頭では分かっているんですけど、みんなから「キャー!」なんて反応されると顔が真っ赤になりそうです(笑)。

 

ー 観ている側も観られている側もドキドキが止まらないという(笑)。ちなみに役作りなどで何か特別に取り組んでいることはありますか?

ジュリエット:『ロメオとジュリエット』は、今までバレエしか観たことがなかったので、関連の本や舞台の映像を観て、自分なりのジュリエットを模索しているところです。

小野先生:江間さんは大人っぽい子なので、今回の演技プランに関しては、もっと理性がなくて突っ走っていくような”幼さ”を出しなさいと日頃からアドバイスしていて、一方で、普段から何をやってもサマになってしまう原田くんには、「かっこ悪さ」「愚かさ」「泥臭さ」を要求しています。『ロメオとジュリエット』は、若さゆえの抑えきれない衝動や愚直なまでのひたむきさによって紡がれていく物語ですからね。

 

ー 先生の”お墨”が付いているとはいえ、やっぱり難しい役どころですね。

小野先生:でも、本格的な練習はまだこれからですね。オーケストラとの合わせもまだ先ですし。7月の期末テストが終わってから、それこそ本番直前に連日追い込んで仕上げる形。トータル40分ぐらいの劇なので、セリフ量もそこまで多くない。彼らならできると思っています。地区大会の練習量と比べたらどうってことないよね?(笑)

 

日大一高

 

ー 今回の『ロメオとジュリエット』は1年ほど前からすでに企画として話が出ていたようですね。

新日本フィル広報・宣伝担当 竹内さん(以下、竹内さん):企画が固まってからはしばらく、具体的にどの高校に出演をお願いするかという状況が続いていました。日大一高さんの演劇部がすごいという噂は以前から聞いていたので、こちらとしても正直話を受けてもらえるか不安で・・・。

音楽監督の上岡は、演劇を含むアート全般に精通していますし、立体的に芸術を捉えている人なので、求めるレベルも非常に高い。そういった中で、やはり今回は日大一高さんにお願いするしかない、と。実際に演技を観させていただいて、忘れかけていた気持ちを思い出し、とてもドキドキさせられました。どんな作品になるか本当に楽しみにしています。

小野先生:そう言っていただけるのは嬉しいですね。ただ、先ほども話に出ていたように地区大会と重なっていた時期だったので、本当に十分な練習ができるのだろうか? これはやっぱり難しいな・・・ と当初は正直感じていました。

とはいえ、めったにないチャンス。生徒たちはもちろん、私自身もできたらチャレンジしてみたいという気持ちの方がどんどん強くなってきたんです。そこで一旦お引き受けして、あとはみんなで力を合わせればなんとかなるだろうという、ものすごく前向きな姿勢で今に至っています(笑)。

 

日大一高

 

ー オーケストラとの共演についてはいかがですか? フルオーケストラによる生演奏との共演、これはなかなかできない貴重な体験だと思います。

ジュリエット:実はオーケストラの生演奏ですらきちんと聴いたことがなくて・・・ しかもこんなに大がかりな舞台を踏んだ経験もほとんどないので、期待よりも緊張の方が大きいです。先日、練習のためにすみだトリフォニーホールに行ったんですが、実際に2階のバルコニー席から舞台を見下ろしてみて、「うわぁすごい・・・大丈夫かなぁ」って(笑)。

ロメオ:トリフォニーホールは演技をするには大きくて、とにかく圧倒されました。オーケストラと一緒に舞台に立つとどうなるか、これについても正直まったく想像できないですね。

竹内さん:そのときの練習風景を事務方のスタッフがテレビモニターにかじりついて観ていたんです。こんなに若い人たちがオーケストラと一緒にここに立つんだと想像して、それだけですばらしい公演になると確信したそうですよ。

小野先生:聞いた話によると、「劇→オーケストラ→劇→オーケストラ」という構成になるのだとか。例えばオペラなどでは「セミステージ形式」などが一般的ですよね。でも、そういった既存の型にはめ込まない、まったく新しい形で上演することになりそう。これは上岡さんの強いこだわりでもあるということで、いったいどんな舞台になるのか今から楽しみです。

 

新日本フィル×日大一高演劇部

 

ー プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』はそれ自体でも魅力的な楽曲ですが、日大一高のみなさんの若さあふれるフレッシュなお芝居との“アンサンブル”を想像しただけでも、同じく初恋の甘酸っぱさを思い出すかのようにドキドキしてしまいます(笑)。

竹内さん:(笑)そうなんですよ。上岡もそのことは強調していました。生きた言葉の美しさや命の輝きみたいなものをすごく大事に考えている人なので、それこそ日大一高のみなさんの、今この瞬間にしか出せない雰囲気や空気感をプラスして、相乗効果であの曲を完成させたいんだと。

また、観ている方たちに「ああ、初恋の時ってこんな気持ちだったよな」とあの頃を思い出してほしいとも言っていました。会場全体に「キャー!せつない!」と思わせる演出を狙っているところもあるんですよ(笑)。そんな風に、日大一高さんには音楽だけでは表現しきれない部分を補っていただき、と同時に、ここにしかない新しいロメジュリの世界にみなさんを誘い込む案内役を担っていただければなと思っています。

ジュリエット:すごい大役だなぁ(笑)。何もかもが初めてでとてもドキドキしていますが、演劇が好きな方も、オーケストラが好きな方も、みなさんに楽しんでいただけるよう精一杯頑張ります!

ロメオ:今回は「恋」がテーマ。音楽と演劇の恋、ロメオとジュリエットの恋というのがうまく掛け合わさればいいなと思っています。プレッシャーもありますが、頑張りますので、ぜひ観に来てください!

 

日大一高

 

新日本フィルハーモニー交響楽団
New Japan Philharmonic

「一緒に音楽をやろう!」1972年、指揮者・小澤征爾のもと楽員による自主運営のオーケストラとして創立。97年、墨田区に移転。同年オープンのすみだトリフォニーホールを活動の本拠地とし、日常の練習と公演を行うという日本初の本格的フランチャイズを導入。定期演奏会、特別演奏会のほか地域に根ざした演奏活動も精力的に行っているのが特徴的。

99年、小澤征爾が桂冠名誉指揮者に就任。2003年から13年までクリスティアン・アルミンクが音楽監督を務め、06年『火刑台上のジャンヌ・ダルク』で第3回三菱信託音楽賞奨励賞、09年『七つの封印を有する書』で第18回三菱UFJ信託音楽賞受賞(以上アルミンク指揮)。同09年『ハイドン・プロジェクト』で第22回ミュージック・ペンクラブ音楽賞を受賞(ブリュッヘン指揮)。 2010/2011シーズンより6年間ダニエル・ハーディングがMusic Partner of NJP を務め、2013/2014シーズンよりインゴ・メッツマッハーがConductor in Residenceに就任(~15年8月)。

16年9月(2016/2017シーズン)より、ドイツの歌劇場で研鑽を積んだ指揮者・上岡敏之が音楽監督を務めている。また、04年夏からは音楽家・久石譲と新プロジェクト「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」を立ち上げたほか、「室内楽シリーズ」等も高い評価と人気を得ている。久石譲とのコラボレーションとして映画『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『崖の上のポニョ』の管弦楽を担当。近年の斬新な企画と優れた演奏は高く評価されている。

公式ウェブサイト:www.njp.or.jp/
公式ツイッター:@newjapanphil
公式Facebook:/newjapanphil
公式Instagram:/newjapanphil

日本大学第一中学・高等学校演劇部

日本大学第一中学・高等学校は、両国にある私立の中高一貫校です。今年で創部105年目(大正3年創部)を迎える演劇部は、中学演劇部と高校演劇部に分かれて平日は毎日活動しています。1つの劇を協力して作り上げるという演劇の性質上、先輩・後輩や男・女、中・高の垣根を越えてみんな仲良くアットホームな雰囲気です。中学は演劇初心者でも気軽に活動できるように発声などの基本練習から行い、文化祭での発表を目標としています。高校は年に何回も発表コンクールがあり、創作脚本を携えて上位入賞を狙って日々頑張っています。昨年は都大会に進出し、池袋の東京芸術劇場で発表する機会を得ました。

 

すみだサマーコンサート2019 ―Chance To Play―
すみだサマーコンサート2019 ―Chance To Play―
公演日 : 2019/7/27(土)
出演者 : 指揮:上岡敏之、演劇、台本、振付、衣装:日本大学第一中学・高等学校 演劇部、管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
場所 : すみだトリフォニーホール 大ホール
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