2019年08月08日

ピアノとコンクール ~「蜜蜂と遠雷」にまつわるえとせとら#1

「蜜蜂と遠雷」 ひびクラシック ピアノ

 

忘れかけていたピアノとの思い出、楽しさを呼び覚ます『蜜蜂と遠雷』が映画化へ

小さい頃、ピアノはかなりポピュラーな習い事の1つではなかったでしょうか? でも、大半の方が大人になるまでにいつの間にかやめてしまっているようです。

始めたきっかけは、好きな曲を何でも弾けるようになりたい、発表会でドレスを着て拍手をもらいたい、みんながやっているから。そんな理由だったと思います。しかし、中・高と進むうちにいつしかピアノの話は出なくなりました。大学に入ると、「むか~し習っていたことがある」と、もはや昔ばなしに。社会に出てから「子どもの頃からず~っとピアノを弾いているんだ」という話はめったに聞いたことがありません。

ピアノを純粋に楽しんだ時代から、ずいぶんと時間が経ってしまいました。が、再びピアノやクラシック音楽とつないでくれる作品と出会ったのです。それは、小説『蜜蜂と遠雷』。文庫本は上・下巻に分かれ、かなりのボリューム。ところが「上」で切り上げるということは考えられず、一日で一気に読んでしまいました。我ながらすごいのめり込みようでした。この作品を読んでから、電子ピアノを買ってウン十年ぶりに弾き始める、より多くのコンサートに足を運ぶ、など人生(おおげさなじゃなく!)にうれしい変化があり、感謝感謝なのです。

この作品は、史上初の直木賞&本屋大賞をW受賞という快挙を遂げ、現在も読者を増やし続けています。そしてついには10月4日に映画が公開されます。製作陣は「映像化不可能」と言われた原作に、「スタッフ、キャスト、楽曲、そして一音にまで妥協無く挑んだ」そうですよ。

 

 

公開まで原作を読む時間はたっぷりあります。まずは原作の『蜜蜂と遠雷』がどんなお話なのか、ご紹介しますね。

 

小説『蜜蜂と遠雷』について

<ストーリー>

舞台は若きピアニストたちの登竜門、芳ヶ江国際ピアノコンクール(※)。天才少女として将来を期待されるも、母親の死をきっかけに13歳で表舞台から去っていた栄伝亜夜(松岡茉優)、音大を卒業後楽器店で働き、コンクール出場には年齢制限ギリギリの高島明石(松坂桃李)、名門音楽院に学び、審査員の1人の秘蔵っ子であるマサル・カルロス・レヴィ・アナートル(森崎ウィン)、亡き“ピアノの神様”の推薦状を持って彗星の如く現れた謎の少年、風間塵(鈴鹿央士)の4人の出場者が出会い、それぞれに刺激を受け合い、成長していく物語。

※3年ごとに開催されている、実在の浜松国際ピアノコンクールをモデルとしている。著者の恩田陸氏が今作のリサーチのために4回も足を運んだという。

 

<作品の魅力>

ピアノコンクールを題材としているだけに、この作品には多数のピアノ曲が登場します。普段クラシック音楽には無縁という方でも、「なるほど、そういう曲なんだ」と読者を納得させる丁寧かつ臨場感たっぷりの曲描写があり、イメージを膨らませながら読み進められます。ピアノをかじったことがあるという方なら「昔みたいにちょっと弾いてみたいな」と思うかもしれません。マニアなら「あぁ、まるでホンモノの浜松国際ピアノコンクールを見ているかのようだ!」と感動することでしょう。

人物・音楽描写ともに色彩豊かな感性と心に響く表現にあふれています。文字を追っていくそばから彼らが奏でる音楽が聴こえ、映像が浮かび上がってくるような作品です。

 

映画『蜜蜂と遠雷』のキャスト&ピアニスト

映画化において原作ファンが最初に気になることは、きっと誰がお気に入りのキャラを演じるかということですよね。

予告編を観てみると、演技派の松岡茉優さんは亜夜が抱える憂いや葛藤を醸し出しており、イケメンの松坂桃李さんは明石みたいに、ちゃんとフツーのサラリーマンに見えます。ハリウッド映画『レディ・プレイヤー1』に出演した森崎ウィンさんは、マサルのように優等生オーラがまぶしいし、やけに印象に残る笑顔の鈴鹿央士さんは人懐っこく無邪気な風間塵そのもの。

キャラクターに俳優が演技で命を吹き込むならば、演奏で命を吹き込むのが4人の一流ピアニストです。栄伝亜夜の演奏を河村尚子さん、高島明石を福間洸太朗さん、マサル・カルロス・レヴィ・アナートルを金子三勇士さん、風間塵を藤田真央さんが担当しています。4人ともキャラクターと同様、コンクールで世界中のコンテスタントと戦ってきた経験を持っているので、現実味のある演奏を聴かせてくれるに違いありません。

 

蜜蜂と遠雷

(c) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

 

日本からも応援できる「世界三大コンクール」とは?

ピアノコンクールは国内外で数多く行われています。その中でも「世界三大コンクール」と呼ばれ、歴史と権威があるショパン国際ピアノコンクール、チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールでは、優勝者や入賞者の中からスター・ピアニストが誕生しています。

● ショパン国際ピアノコンクール(開催地:ポーランド・ワルシャワ)

5年ごとに開催。次回は2020年10月。これまでに内田光子、故・中村紘子、海老彰子、小山実稚恵、横山幸雄らが入賞。歴代優勝者はマウリツィオ・ポリーニ、マルタ・アルゲリッチ、クリスティアン・ツィメルマン、ユンディ・リなど。

● チャイコフスキー国際コンクール(開催地:ロシア・モスクワ)

4年ごとに開催。今年行われたコンクールでは藤田真央が第2位に入賞を果たした。ピアノ部門における日本人の史上最高位は上原彩子の第1位。これまでに故・松浦豊明、小山実稚恵が入賞。歴代優勝者はウラディーミル・アシュケナージ、ミハイル・プレトニョフ、ダニール・トリフォノフなど。

● エリザベート王妃国際音楽コンクール(開催地:ベルギー・ブリュッセル)

ピアノ部門は3年~4年ごとに開催。次回は2020年5月。これまでに内田光子、若林顕、仲道郁代、松本和将らが入賞。歴代優勝者はウラディーミル・アシュケナージ、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、アンナ・ヴィニツカヤなど。

どのコンクールも開催地まで足を運ぶには遠いですが、近年はインターネットでライブ配信が行われています。つい最近ではチャイコフスキーコンクールで藤田真央さんが日本人男性としては歴代最高位の2位となり、連日寝不足になりながら応援したファンも多いことでしょう。

コンクールという場は、日本人のコンテスタントを応援することはもちろん、まだ知名度がさほど高くない若きピアニストたちからお気に入りを見つけ、勝ち進む姿をドキドキしながら見守るのも楽しみの1つ。まるで自分が発掘したかのような気分になり、「来日公演を行う」なんて聞いたら駆け付けたくなってしまいます。

来年は3大コンクールの2つが開催されるという、ピアノファンにとってうれしい年です。『蜜蜂と遠雷』の小説と映画でコンクールの雰囲気に触れ、実際のコンクールをインターネットで覗いてみるのもおもしろいと思いますよ!

文/賀来比呂美 (かく ひろみ)

 

 

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10/4(金)公開の映画『蜜蜂と遠雷』とひびクラシックとのコラボレーションによる特設ページはこちらから。最新ニュース、連載コラム、インタビュー、インスタグラム、さらには豪華賞品が当たるキャンペーンなど、今後も様々な関連情報やコラボ企画を追加していきますのでどうぞお見逃しなく!

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「蜜蜂と遠雷」映画情報

2019年10月4日(金)全国公開

史上初となる直木賞&本屋大賞のW受賞を果たした恩田陸の傑作小説「蜜蜂と遠雷」がついに実写映画化。

ストーリー
芳ヶ江(よしがえ)国際ピアノコンクールに集まったピアニストたち。復活をかける元神童・亜夜。不屈の努力家・明石。信念の貴公子・マサル。そして、今は亡き“ピアノの神”が遺した異端児・風間塵。一人の異質な天才の登場により、三人の天才たちの運命が回り始める。それぞれの想いをかけ、天才たちの戦いの幕が切って落とされる。はたして、音楽の神様に愛されるのは、誰か?

監督・脚本・編集
石川慶

原作
恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)

出演
松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士(新人)
臼田あさ美 ブルゾンちえみ 福島リラ 眞島秀和 片桐はいり 光石研
平田満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史

音楽
ピアノ演奏:河村尚子(栄伝亜夜) 福間洸太朗(高島明石) 金子三勇士(マサル・カルロス・レヴィ・アナトール) 藤田真央(風間塵)
作曲:藤倉 大「春と修羅」
オーケストラ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団(指揮:円光寺雅彦)

製作情報
製作:映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
製作プロダクション:東宝映画
配給:東宝

公式サイト
映画『蜜蜂と遠雷』公式サイト
https://mitsubachi-enrai-movie.jp/

(c) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

映画「蜜蜂と遠雷」チケット情報【事前座席選択可】

蜜蜂と遠雷公開日:2019/10/4(金)
出演:松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士(新人) 臼田あさ美 ブルゾンちえみ 福島リラ 眞島秀和 片桐はいり 光石研 平田満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史

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「蜜蜂と遠雷」原作小説

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