2019年08月21日
いざ、試写会へ ~「蜜蜂と遠雷」にまつわるえとせとら#2

一足先に映画『蜜蜂と遠雷』を鑑賞。音楽の神様に出会えました。
先日、『蜜蜂と遠雷』の試写会に行ってきました~! 万が一、満席で観られなかったら大変と思って結構早めに行ったのですが、すでにかなり埋まっていました。マスコミ試写会は、作品によっては貸し切り状態に近い時もあるので、『蜜蜂と遠雷』の注目度の高さがうかがえます。ラッキーなことに真ん中がぽつんと空いていたので、ベストポジションに座ることができました。幸先が良い♪
2時間に詰まった原作の世界観と新しい要素
『蜜蜂と遠雷』の映画化にあたり、原作を読んだ方ならきっと誰もが思うでしょう。「あのボリュームを、どうやって1本の映画にまとめるの!?」と。上映時間はわずか2時間となかなか短いのも気になるところです。期待と共に緊張も感じながら鑑賞スタート。
原作を読んでいる身としては、「おお! そこからそう始まるか」という大胆なストーリー展開にドキドキ。尺の都合上、すべてを網羅するのが不可能であっても、あのシーンだけは映像化してほしいというツボを押さえ、美しい映画作品に仕上がっていました。
原作がある映画というのは、「原作はあくまでも参考程度」「原作にほぼ忠実」「原作の一部をピックアップして重点的に描く」「原作の全体をギュッと凝縮して描く」と、だいたい4つのタイプに分けられるかと思います。『蜜蜂と遠雷』は、「原作の全体をギュッと凝縮して描いた」作品に当たるでしょう。そのため展開は実にスピーディー。驚きの手法で登場人物やエピソードを削り、まとめ、時には原作にいなかったキャラクターを登場させて和ませつつ、ゴールに向かって進行。映画『蜜蜂と遠雷』ならではの新たな要素も追加され、見せ場にもなっています。上巻だけでも原作を読んでおくと、キャラクターのより深い背景を知った上で映画を楽しめますよ。最後は文庫本の上・下巻を2時間で駆け抜けたという爽快感が得られました。
ひびクラ的注目ポイントは?
原作でも映画でも、舞台となる芳ヶ江国際ピアノコンクールの予選において、コンテスタントが「春と修羅」という課題曲を弾くシーンがあります。この曲にはカデンツァ(即興演奏)があり、それが審査に大きく関わることになります。原作では「春と修羅」及び4人が弾いたカデンツァについて細かい描写がありました。この描写を参考に、気鋭の作曲家・藤倉大さんが完全にオリジナルの「春と修羅」を作曲。カデンツァの部分も原作に合わせて4つ作り、劇中で演奏されています。この曲を最旬俳優たちの演技と世界的ピアニストたちの演奏で聴くことができるというのが、原作では味わうことのできない映画の醍醐味です。他のクラシック音楽と違い、これまで本の中にしか存在しなかった曲が、生きた音色を鳴らすのですから。
藤倉大 (c) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
作品の魅力を際立たせるキャストの演技
『蜜蜂と遠雷』の舞台は、ピアノの国際コンクールという“戦い”の場ですが、誰かを蹴落としてのし上がるというものではなく、葛藤、不安、トラウマ、プライド、見つからない答えなど、誰もが抱えているものと自分自身との“闘い”がクローズアップされています。舞台に立てばプロの演奏家であっても、そこに立つまでには血のにじむ努力や苦労があり、常に自分が目指す音楽を追求していかなければなりません。4人の主要キャラを演じるキャストたちは、そういった演奏家を繊細に演じ、お互いに刺激を受け合って成長していく様子に説得力を持たせました。ビジュアル面だけでなく、限られた時間でいかにキャラを掘り下げて魅せるかに注力しているようでした。
ピアノをはじめ、音楽を演奏する演技というのは高い技術を要します。一瞬でも「本当は、ここまで弾けない」という姿をチラつかせてしまうと、観客が一気に現実に引き戻されてしまうからです。その点で、『蜜蜂と遠雷』は、演奏シーンを安心して観ていられました。中でも鈴鹿央士さん演じる風間塵は、「あはは、きっとこんな風に弾くんだろうな」と原作からも想像できる、はじける姿が光っていました。
(c) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
耳福!ストーリーテラーな世界的ピアニストたち
河村尚子さん、福間洸太朗さん、金子三勇士さん、藤田真央さんという世界で活躍中のピアニストたちが、登場人物4人のピアノ演奏を担当しているとは、あまりに豪華! ピアノ好きな方なら、4人の演奏が1本の映画の中で聴けてしまうということだけで、映画を観る十分な動機になりそうですね。
そして、思いっきり期待してください。音楽でストーリーを語るプロであることを存分に聴かせてくれます。この作品においては「観る」のと同じくらい「聴く」ことに幸せを感じることができます。特に本選で亜夜が弾くプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番には興奮。魂を揺さぶられ、熱いものがこみ上げました。
左上から時計回りに)河村尚子、福間洸太朗、藤田真央、金子三勇士
(c) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
ほとんどすべての演奏がフルで聴けないのは残念ですが、9月に発売されるインスパイアード・アルバムでおさらいしたい、ピアニストたちの生の演奏が聴きたい、そんな気分にさせてくれる映画であったことはまちがいありません。至る場面で流れる臨場感あふれる本物の音楽をぜひ体感してください。
文/賀来比呂美 (かく ひろみ)
「蜜蜂と遠雷」にまつわるえとせとら
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「蜜蜂と遠雷」× ひびクラシック
蜜蜂と遠雷×ひびクラシック 2019/8/8
映画「蜜蜂と遠雷」× ひびクラシック
10/4(金)公開の映画『蜜蜂と遠雷』とひびクラシックとのコラボレーションによる特設ページはこちらから。最新ニュース、連載コラム、インタビュー、インスタグラム、さらには豪華賞品が当たるキャンペーンなど、今後も様々な関連情報やコラボ企画を追加していきますのでどうぞお見逃しなく!
「蜜蜂と遠雷」映画情報
2019年10月4日(金)全国公開
史上初となる直木賞&本屋大賞のW受賞を果たした恩田陸の傑作小説「蜜蜂と遠雷」がついに実写映画化。
ストーリー
芳ヶ江(よしがえ)国際ピアノコンクールに集まったピアニストたち。復活をかける元神童・亜夜。不屈の努力家・明石。信念の貴公子・マサル。そして、今は亡き“ピアノの神”が遺した異端児・風間塵。一人の異質な天才の登場により、三人の天才たちの運命が回り始める。それぞれの想いをかけ、天才たちの戦いの幕が切って落とされる。はたして、音楽の神様に愛されるのは、誰か?
監督・脚本・編集
石川慶
原作
恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)
出演
松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士(新人)
臼田あさ美 ブルゾンちえみ 福島リラ 眞島秀和 片桐はいり 光石研
平田満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史
音楽
ピアノ演奏:河村尚子(栄伝亜夜) 福間洸太朗(高島明石) 金子三勇士(マサル・カルロス・レヴィ・アナトール) 藤田真央(風間塵)
作曲:藤倉 大「春と修羅」
オーケストラ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団(指揮:円光寺雅彦)
製作情報
製作:映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
製作プロダクション:東宝映画
配給:東宝
公式サイト
映画『蜜蜂と遠雷』公式サイト
https://mitsubachi-enrai-movie.jp/
(c) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
映画「蜜蜂と遠雷」チケット情報【事前座席選択可】
公開日:2019/10/4(金)
出演:松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士(新人) 臼田あさ美 ブルゾンちえみ 福島リラ 眞島秀和 片桐はいり 光石研 平田満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史
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発売日 : | 2019/09/04 |
レーベル : | ソニーミュージックエンタテインメント |
フォーマット : | BLU-SPEC CD 2 |

発売日 : | 2019/09/04 |
レーベル : | NAXOS |
フォーマット : | Hi Quality CD |

発売日 : | 2019/09/04 |
レーベル : | ユニバーサル ミュージック |
フォーマット : | SHM-CD |

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