オーケストラとともに~新日本フィル×久米信行会長<3>

新日本フィルハーモニー管弦楽団 久米繊維工業株式会社 久米信之会長

音楽を愛し会場に足を運ぶ聴衆ばかりではなく、多くの企業や個人に支えられているのがオーケストラ。その支援者をフィーチャーし、お話を伺うのがこのコーナー。

第1回は、新日本フィルハーモニー交響楽団を父の代から応援している、久米繊維工業株式会社の久米信行会長。観光協会や文化振興財団の評議員を務めるなど多忙な日々を送っている方だ。
NPOを応援するTシャツを作成する活動の一つに、新日本フィルのTシャツ作成があるということだが、そもそもなぜオーケストラを支援することになったのか。さらに生粋のロック好きである久米さんがどうしてクラシック好きになったのか、お話をお伺いした。(全3回 ※最終回)

 

「辛かったり悩んでいるときには、ぜひクラシックコンサートへどうぞ」

 

— 若者に限らず、多くの“食わず嫌い”や“思い込み”の潜在顧客がいると思いますが、どんな風にクラシック音楽に向き合って楽しむのがよいと思いますか。

まずは、格式張ってるんじゃないかとか、固定観念を持たずに聴いた方がいいですよね。コンサートに誘うと、「何着ていったらいいの?」とよく訊かれます。「そのままの恰好でいいよ」とは伝えていますが、そもそも僕なんかはこのままの恰好で行きますよ(笑)。あとはね、解説書とかも難しいから、そういうのも全部ナシ。ただ聴いてください、あとは寝てもいいですよ、と思っています。寝るのはとても大切ですよ。ホルスト好きというのもその表れかもしれないですが、私はちょっとオカルト好きな人間なので、瞑想とかが好きなんですね。よく瞑想ではアルファ波を出そうとかいいますが、もっと瞑想が深くなるとシータ波という、要は寝ている状態と起きている状態の間くらいになるんです。クラシックのコンサートに行くと、天国と現世を行き来しているような感覚になることがよくありますが、あの状態が一番いい状態なんですよ。そこに最高の音楽が入ってくるなんて、それだけで本当のリラクゼーション。好きな曲でノリノリにやるのも楽しいですが、何かわからないけれども気持ちいい、そういう感じでとにかく3年間聴いてほしいですね。何かが変わりますから。

— コンサートをBGMみたいにして考え事をしたり、寝ることもあったり。いろいろな過ごし方があっていいですよね。

クラシックのコンサートで寝ると、日々の生活の中での脳の凝りとかがなくなると思いますよ。だから辛かったり悩んでいるときには、ぜひコンサートへお出かけください。ネクタイとかをしていると眠れないから、Tシャツでも着て出かけて、ゆったり寝てほしいです。あとね、新日本フィルは直前にロビーコンサートとかもやっているから、そこで生の音を近くで感じて、願わくばそこで一言二言話しかけてみてもらいたい。サイン会でも話す機会はありますし、ぜひ交流してほしいんです。外国人の方でも通訳の方がいてくれるので安心です。そういう風に話をするだけで身近に感じられるようになると思いますよ。実際に聴いたもの、実際に演奏した方のサインの入ったCDは、PCやスマホでダウンロードして聴くものとは全く違って聴こえてきますし、何より思い出になりますから。私も気づけば20年が過ぎましたが、少しずつ自分の中に溜まっています。コンサートに来た証としてCDを買って愛聴するというのはなかなかいいと思いますよ。

— 新日本フィルへの愛がひしひしと伝わってきます。ここまで長く関わっていると、もはやご自身のオーケストラのような感覚ですよね。

そうなんですよ。私も商売をやっているのでお客様との関係をとても気にするのですが、今はなんでもネットで調べられますよね。もっと安いところとかもっとサービスの良いところとか。でも最後は「馴染みのあそこで買いたい」というのがいいなと思うんですよね。地元の商店街で、馴染みのおじさんのところで焼き鳥を食べる、というのと同じ感覚です。なんでも選んで買える今の時代をそれはそれで楽しみつつ、自分の習慣の中で大切にしたいものには馴染みがあった方がいいですよね。

久米繊維工業株式会社 久米信之会長

— 最後に、久米さんにとってクラシック音楽とはなんでしょうか。

難しい質問ですね(笑)。クラシックというと、普通“古典的”とか“古臭い”、“形式ばってる”という感じかもしれないけれども、僕のクラシック音楽のイメージは「時空を超えた改革者の金字塔」ですね。今はクラシックになったけれども、当時はベートーヴェンの『第九』を聴いても「なんじゃこりゃ!」と理解ができなかったはずですし、バッハの『トッカータとフーガ』だって「なんだ?!」って思ったはずなんです。この世の終わりみたいな曲ですし、「なぜ教会でこんな音楽を鳴らすんだ、不吉だ」とかなんとか言ったと思うんですよね(笑)。そういう意味での“前衛”とか“改革者”、が僕のイメージ。ロックな人たちの遺したものも今はクラシックになって、だからこそ遺っているんだと思っています。ポップスはその時代時代にたくさんあったはずでも、サリエリではないですが、淘汰されていくものなのだと思います。

— そうですよね。クラシック音楽はその時代には“前衛”で、今私たちがビックリさせられるような現代音楽と同じ感覚だったのだろうと思います。

『第九』なんて本当にすごいですよね、「なんでこうやって終わるんだ?!」って感じ。長々とやってきた曲を「これじゃない!」って最後に全否定(笑)。ずっと作ってきて9曲目まできた交響曲の最後の楽章に「こんなんじゃない!」って合唱をつけて終わるという・・・強烈ですよね。一方でサティやジムノペディみたいな「・・・これしかないの?!」っていう、バッハよりも少ないみたいなものを聴いた人は「なんじゃこりゃ?この曲のサビはどこ?」って思ったでしょうしね(笑)。その時にはウケなくても、後々ウケるというのがいいですよね。

とにかく引き出しが多くて、アイディアが豊富で、思いや言葉が止めどなく流れ出して止まらない、とても気さくで優しい久米さん。新日本フィルへの愛はもちろん、クラシック音楽への愛情もたっぷりとお伺いすることができたひと時だった。

 

★こぼれ話★

— ご自身を作曲家に例えると?

音楽的な才能とかそういう点を一切無視したならば、シューベルトです。直ぐに忘れちゃうから(笑)。僕は、アーカイヴできないタイプの人間なんです。シューベルトは書いたそばから忘れていたらしいですよ。「これ、いい曲だね」「君が作った曲だよ」という状態だったんだとか。私の理想の生き方でもありますね。僕の尊敬する彫刻家の山田朝彦先生もこの間同じことを言っていました。「この前ね、この作品が好きって人が来たんだけど、自分のものなのに覚えていなかったよ」って(笑)。やはり作るまでが楽しいんですよね、ほんの2年前の作品だったらしいんですけどね。私も原稿を書いても、書いたら忘れてますし、写真撮ってSNSに上げたら忘れています。メモリが小さい人間としては、そうあることがカッコいいなと思いますね。それに、未完成の作品がとても多かったらしいですよね、早くに亡くなられているので。そういう未完成なままで最期終わる、というのが私の理想の生き方です。

 

《第1回目を読む》

《第2回目を読む》

 

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  • 2018/12/7 you**m**

    ロックだな!この人!
  • 2018/12/7 **s*i*okur**

    クラシックコンサート。久しぶりに行ってみる事にします。 なんだかとても素敵な記事でした。