オーケストラとともに~東京交響楽団×丸紅新電力株式会社 西山大輔(代表取締役社長)<2>

音楽を愛し会場に足を運ぶ聴衆ばかりではなく、多くの企業や個人に支えられているのがオーケストラ。その支援者をフィーチャーし、お話を伺うのがこのコーナー。

第2回は、2018年に東京交響楽団とパートナーシップ契約を締結した丸紅新電力の西山大輔社長。電気料金の一部で東京交響楽団の活動を応援するシンフォニープランをスタートさせた。
電気×オーケストラの化学反応で生まれる日本の未来。こんなクラシックの楽しみ方知らなかった!クラシックファン、ビジネスマン必読の全2回。

 

「東京交響楽団の演奏会に行って、その空気に触れること、そこで演奏することに世界中の人々が憧れる、そんな場を作りたい」

 

— 「シンフォニープラン」という新しい形態のコラボレーションをされていますが、今後のアイデアなどは何かありますか。

プランを立ち上げたばかりなので、まだ本格的な普及には至っていないのですが、アイデア自体は色々と持っています。ある時、宝生さん(宝生流シテ方能楽師 第二十代宗家)がとても良いことをおっしゃっていたんですよ。「物に残すと廃れるけど、人に残すと熟す」と。人から人へと口移しで伝達されていったものは熟していくということなんです。逆に、物にそれを落としていくと、その劣化とともに廃れてしまう。人が人に何を残すのかというのは究極のテーマ。その話を聞いた時に、自分たちの事業と同じ共通課題なんだなと。

やっていることもやり方も違うけれど、最後はこの国の人が次の世代に対して何を残していくのかという仕組みを経済が成り立つ形で継承する、そうすれば国力はおのずと上がっていくはずなんです。東京交響楽団のみなさんが技量やクオリティを磨く。私たちはそれを事業としてサポートする。この関係性を続けていけるように、ただ単に認知を高めていくのではなくて、「応援してもらう」という仕組みとその結果として何が生み出せるかということを東京交響楽団のみなさんと考えていきたいですね。

— 西山社長が描く東京交響楽団の理想的な未来像というのは。

東京交響楽団が世界中の人々の憧れの的であってほしい。演奏会に行って、その空気に触れること、そこで演奏することにみんなが憧れる、そんな場を作りたい。日本でそういったことが文化としてしっかり根付いてくると、そこに世界中の人たちが集まってくる。言ってしまえば、文化、芸能の発信地、つまりヨーロッパでいうパリのような存在に東京がならなければ、アジアの中で日本は生き残ることができないとまで考えています。

— クラシックと電力事業とのシナジーが、今後の日本のアジアでの立ち位置にまで影響を及ぼす可能性があるとは考えてもみませんでした・・・ ただ、海外からの観光客による消費が増えている中、日本が意識的に文化・芸能の質を高めていこうとすることは、経済効果に照らし合わせてもすごく意義のあることだと思います。

もうひとつだけ専門的な話をすると、日本はGDP第3位で、1つの製品に特化するだけで企業体が成り立つほど豊かではあるけれど、これからのグローバルマーケットにおいてはそうもいかない。その製品だけでは今後商売ができないとなれば、日本人の一番の強みでもあるアライアンス、つまりみんなで協力し合う企業グループ体を作り上げていかなければいけない。みんなをくっ付けていく商社的な動きが必要なんです。その最初の接着剤として電気事業にはすごいバリューがある。電気で色々な人をくっ付けていきたいんです。

クラシックにしろ、能にしろ、その本質や普遍的な価値を正しく理解した上で見ると、さして深い知識のない私でも十分に楽しめるんです。電気も同じ。どうして安くなるのかという仕組みをしっかり理解することができれば、何の心配や不安もなくなる。浮いたコストでコンサートのチケットを1~2枚買うゆとりだって出てくる。つまり、単純にコストが下がっただけでなく、同時に自分の教養に再投資することもできるんですよ。

丸紅新電力株式会社 西山大輔

— 経営者の視点から、クラシック音楽業界のマーケティング、PR、広報などにアドバイスはありますか?

そもそも「うちの電気ヤバい!品質が超イイ!」っていう人なんていないじゃないですか(笑)。例えば、代金の安さや安全面だったり、あるいはサービスのクオリティだったり、それ自体の物質的な価値ではなく、そこに紐づく便益というものにお客様は対価を払っていると思うんですよ。

クラシックも同じで、すごく良い演奏がその価値のひとつだとすると、一方で演奏に触れる空間、つまりコンサートホールに行くということや、そこで何かをするという所作などにもう少し便益を持たせて集客をしていくとおもしろくなっていくんじゃないのかなと。曲を聴くこと以外の便益がいくらでもあるんじゃないかと思いますけどね。

— ちょっと仕立ての良いスーツを着てコンサートに行ってみたりとか。

買ったばかりの靴を履いて400円のペリエを飲み干す自分に酔いしれるとか(笑)。でも、そうした良い意味での“勘違い”を持って曲を聴きに行って、楽しめることができたら結果オーライですよね。音楽だけじゃない便益がコンサートホールという空間には沢山あると思うので、その価値をひとつずつ訴求していけば、色々なタイプの人たちが集まってくるんじゃないのかな。かっこいいデートの仕方のひとつとして、とかね(笑)。

— (笑)ふだん仕事に追われているビジネスマンにも魅力的な提案ができそうですね。

例えば仕事の時によく言われるのは、経験のクラフト、論理性のサイエンス、そしてアート、これが三位一体となった時に初めてバリューが出てくるということ。勢いや流れだけでやっている時というのは、大抵クラフトとサイエンスばかりになってしまう。効率性や実地経験を踏む上での耐性力を積んでいくだけなので、集団の中で先頭を走るところまではいくけど、トップをキープすることはできない。やり方自体が模倣可能なうすっぺらいものになってしまうから。結局、そこにいかにオリジナルなアート性を取り入れることができるかということなんです。

その感受性を高める上でも、世の中で美しいと思われているもの、良いと言われているものに触れ続けることはやっぱり大事。そう考えると、ビジネスマンがクラシックコンサートに足を運ぶということにも何かしらの大きな価値が見い出せると言えそうですよね。

— では最後になりますが、西山社長にとってクラシック音楽の良さとはどのようなものですか。

普遍的な価値という部分で、国や時代を超えて残っている楽曲を今の子供たちが弾いている姿を見ると、やっぱり何とも言えない良さを感じます。よく3歳とか5歳の子供がピアノの発表会に出たりしますよね。緊張のあまり、椅子に座った途端に忙しなく弾きはじめたり、ちょっと間違えただけで泣いちゃったりして(笑)。でも、その歳から音楽を通じてありのままの自分をさらけ出して表現するというのは、実はすごく大事なことなんですよね。

一般的に、アジア人はグローバルカンパニーなどに行くと、発言も少ないし、自己表現も少ないと言われ続けている。海外では自己表現の仕方をよくプレゼンテーションやスピーチなどで磨くんですが、小さい頃から音楽をやっている子たちというのは自分をさらけ出すということにほとんど抵抗がなく、あらゆる環境への順応性がきわめて高いんです。しかも、自主的に発信しないと受け入れてもらえないという状況下では、その発信の仕方にしても、あくまで基礎と規律があった上での自己表現、そのバランスが非常に重要になってくるんですよ。私自身が人生を振り返ってみても、やっぱり音楽をやっておけば良かったなっていう思いはありますね。そういう意味では、聴くにしても演奏するにしても、クラシック音楽には、まだまだ計り知れない大きな価値というものがあるんですよね。

 

★こぼれ話★

— 能をたしなむようになったきっかけというのは。

「一流企業の社長さんが経営課題をブレストするような空間では、よく能の呼吸法や発声法が使われているんですよ」と言われて観に行ったことがきっかけ。それまではなかなか触れる機会はなかったのですが、すごく興味深い切り口で楽しむことができた。これも、能というものにある、ひとつの便益なんだと思います。

— 多彩な趣味を持つ西山社長の今のマイブームはありますか。

パートナー会社の社長に勧められて、最近は世界遺産検定にも興味を持っています。「人々が使命感に駆られてまで守りたいと感じる美しい世界遺産。それは必ずその地のルーツにきちんと従って表現されているものだから」と言われたんです。その歴史を踏まえた上で建造物を見ていくと、自分自身の事業、あるいは人生にまつわるルーツを今どのように表現するべきかという気づきにも繋がることを教えていただきました。これからさらに勉強していきたいと思っています。

 

《第1回目を読む》

 

丸紅新電力(※外部サイトへリンクします)
https://denki.marubeni.co.jp/company/
シンフォニープラン
https://denki.marubeni.co.jp/culture/symphony/

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