オーケストラとともに~東京交響楽団×丸紅新電力株式会社 西山大輔(代表取締役社長)<1>

音楽を愛し会場に足を運ぶ聴衆ばかりではなく、多くの企業や個人に支えられているのがオーケストラ。その支援者をフィーチャーし、お話を伺うのがこのコーナー。

第2回は、2018年に東京交響楽団とパートナーシップ契約を締結した丸紅新電力の西山大輔社長。電気料金の一部で東京交響楽団の活動を応援するシンフォニープランをスタートさせた。

電気×オーケストラの化学反応で生まれる日本の未来。こんなクラシックの楽しみ方知らなかった!クラシックファン、ビジネスマン必読の全2回。

 

「音楽の国も時代も超えた普遍的価値を今に活きるかたちで残していく、その広さと深さに総合商社と共通するダイナミズムを感じました」

 

— まずは丸紅新電力の設立について教えていただけますか。

丸紅のような総合商社では、ラーメンからミサイルまで世界中のありとあらゆる商材を扱っています。その中でも電気と食料だけは他の商社と比べてコミットメントが高いエリア。海外電力では発電容量が世界第1位で、発電所を22か国に所有しています。国内においても、2000年の部分的な電力自由化のタイミングで参入しました。

自分たちで発電所を建設して、小売り需要基盤を伸ばし、そして、2016年4月の全面自由化のタイミングで分社化し、丸紅の新しい電気事業会社として「丸紅新電力」という会社を立ち上げるに至りました。全国の法人・個人問わずに電気を供給することはもちろん、そこで抽出されたお客様のお困りごとや課題感を、総合商社ならではの商材力やネットワーク力を活かして解決をしていくことでこの国を元気にしていく、そのドライバー役を担っていきたいと考えています。

— 電気事業を通してお客様と関わっていく中で、特別な気づきや実感はありますか。

電気を入り口にお客様の声に耳を傾けると、商社の商材力、ネットワーク力を展開していく起点というものがより明確に見えてきた。それがこの3年間の実感としてありますね。

事業基盤もようやくひとつのコーポレーションとしての体をなしてきたところで、これからは、そうしたお客様ひとりひとりの声にお応えできる商材やサービスの提供にしっかり取り組むことができる。商社としては、今まで対大手企業を中心にしていたものが、個人のお客様に寄り添える初のケースとなる、その起点を作れるんじゃないかなと思っています。

— 今後さらに可能性が広がっていきそうですね。2018年からパートナーシップ契約を結んでいる東京交響楽団とはどのようなきっかけで出会ったのでしょうか。

一番のきっかけは、人の繋がりです。私たちの役員が東京交響楽団の評議員を務めていて、楽団員のみなさんとお話しをさせていただく機会がありました。その際、音楽という国も時代も異なるものを聴いたときに理屈抜きに「良い」と感じる普遍的価値の話になったんですが、そこに総合商社と共通するダイナミズムを感じたんです。国も時代も超越して、今に活きる形で応用さえすれば新たな価値が生まれるという、その広さと深さが私たちの事業ドメインと似ているなと。

— この出会いは経営にも活かされているのではないですか。

おっしゃるとおり、大野順二さん(東京交響楽団専務理事・楽団長)に教えていただいた演奏家の人生や曲にかける思いは、日々の生活や経営に確実に活きています。もはや東京交響楽団を支援するということは、私たちの事業を行なっていく上で必要不可欠なビタミンのようなものなんですよ。

音楽でも絵画でも、本物と向き合って目と耳と肌でいつも感じていると、「良いものを選ぼう」という自分自身の意思決定をしっかりとできるようになる。その判断は正しいか、しかるべきタイミングで動けているかという自分のあるべき姿の軸ができあがる。本物に触れるということは、YouTubeで観たり聴いたりするのとはやっぱり質が違うんですよね。

凛とした装いでステージに登場して、自らを演奏で表現しながら全体の調和の中で曲を作る。言い知れぬ緊張感やプレッシャーの中で、一心不乱に自己表現の喜びを追求する。これはとても強く美しいことだと思います。コンサートを観るたびに、そういった次元まで自分を高めていけたらなと感じますね。理想と現実のギャップを埋めるために今何をするべきなのかということだって、彼らの演奏にかける姿から学ぶこともできる。

— 実際にコンサートに足を運ぶからこそ得られることですね。

しかも彼らは、拍手のボリュームや観客の反応で常に自分のパフォーマンスが評価されているわけじゃないですか。 つまり、瞬間瞬間で自己表現の是非と向き合っている。それをコンサートに行ってじかに感じることができるというのは、自分自身を律する上でもすごくバリューがあることだと思うんですよね。

丸紅新電力株式会社 西山大輔

— 西山社長は、お仕事だけでなく趣味も大切にされているそうですね。

元々は仕事が趣味みたいなものだったんですが、そこからマラソンや筋トレを始めて、今はもっぱら音楽と絵画と能。でも、一番の趣味は人と会うこと。会食やミーティングで良いなと思った人には手紙を書いて、2~3回お会いするようにしていて、その人の生き方、経営リテラシー、そして人脈、この3つの項目について学んだことや気づきをノートに短く書き留めていくことが今一番楽しくて(笑)。でも、音楽、絵画、能、筋トレも含めて、どれも自分には欠かせないエッセンスになっています。

–ちなみに、クラシック音楽を聴きはじめたきっかけというのは。

自分の人間力を磨かなきゃいけないなと思ったからです。会社の設立当初、大幅な利益の上がり下がりを経験する中で意識が大きく変わった。自分は何をやろうとしていて、実際に何をやって、何ができなかったか、これをしっかり整理することで収支は後からついてくるものなんだと。そうした意識のよりどころとなる高い人間力を備えるには、常に本物に触れて、その価値を見極めることができるよう勉めなくてはならないと強く感じたんです。それからですね、本格的にクラシック音楽を聴きはじめたのは。

それまで、まったくと言っていいほどクラシックは聴いてこなかったんです。というのもあって、それこそ当初は「ピアノやヴァイオリンをやる人が多い中で、この人はどうして出番の少ないシンバルを選んだんだろう?」なんていう疑問だらけでした(笑)。でも実際に演奏を聴くと、曲全体のバランスやインパクトという部分でも欠かすことができない。ピアノやヴァイオリンが下地を作って、彼らシンバルがそこに色をつける。全ての楽器がないと成立しないんですよね。大野さんには、こうした疑問にも真摯にお付き合いいただいたり、さらに演奏家たちの後ろ側にある人生などを教えていただいたりして、都度その深みに感銘させられました。

— 西山社長のようなアプローチでクラシック音楽に興味を持っていただくというのは、とても貴重なことだと感じます。

難しい曲から入らないで、自分がいいなと思う曲から聴くのがまず第一歩だと思います。それも曲名などをただ覚えるのではなくて、その演奏家がパフォーマンスしている空間でじかに聴いて、その後ろ側の人生を考えるだけでも曲を聴く姿勢が変わりますし。そういう深みがクラシックにはありますね。

 

★こぼれ話★

— クラシック音楽以外にも音楽は聴かれるんですか?

マラソンの時に、ワンオク(ONE OK ROCK)を聴きますね。「Wherever you are」とか聴いて涙しちゃって(笑)。今は「I was King」がヘビロテです。

— 趣味のひとつである絵画の“西山社長流”の楽しみ方を教えてください。

国立西洋美術館には月に2回ほど行きます。特にどの画家の作品が好きというのはなく、その風景に対してストーリーを感じさせる絵を30分ぐらい眺めています。以前は物販コーナーで”お土産”を買って帰る程度でした(笑)。でも今は、好きな風景画の中に自分が同化するシーンをイメージできるものがあると、そこに立ち止まってあれこれ想像をめぐらせながら享受できるようになった。タッチとか構図とか難しいことはまだ分からないんですが、「良いものは良い」というのが少しずつ分かるようになってきました。

「オススメのクラシックの名曲はありますか?」と編集部に尋ねる西山社長。熱心にメモを取る姿に、ひびクラ取材班もやおら背筋が伸びる思いに。

 

《第2回目を読む》

 

丸紅新電力(※外部サイトへリンクします)
https://denki.marubeni.co.jp/company/
シンフォニープラン
https://denki.marubeni.co.jp/culture/symphony/

東京交響楽団(※外部サイトへリンクします)
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楽団サポート(個人)
http://tokyosymphony.jp/pc/support/individual.html
楽団サポート(法人)
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