「朝♪クラ」って知ってる?~クラシック噂の現場

朝♪クラ_クラシック噂の現場

「先週の土曜日の朝、彼女に連れられてヒルズ・マルシェに行ったら、外でクラシックコンサートやってたんですよ。朝♪クラっていうとこが仕掛けているみたいで、編集長知ってます?」

週末の朝から港区で彼女とデート…なんてスタイリッシュと感動しながら、聞き覚えのない「朝♪クラ」を検索。こんな団体あったかな、代表の人も知らない…ん、1人株式会社?クラシック音楽で起業??

✉編集長「お会いしたいです」

✉朝♪クラ代表「いいですよ~」

ということで真夏のとある日、「朝♪クラ~Asa-Kura~」代表の加藤夏裕さんにお会いしてきました。

 

朝♪クラ=クラシック×ビジネス?

ー なぜクラシック音楽でビジネスをはじめようと思ったのでしょうか。

僕らはクラシック音楽をプロモートしていますけれども、実を言うと最初はクラシック音楽にフォーカスしようとは思っていませんでした。

僕はヨーロッパの優雅な文化に憧れを持っていて、日本では何となくそういう交流の場やパーティーといった空間で上質な文化に触れる機会が少なく、日本で優雅を体験できる場ってないのかな?と考えていました。

実は母も祖母も音楽をやっていた家庭に育っていて、家にいる時は一日中ピアノの音が聞こえてくるし、祖母の家に行くと筝や三味線の音が聞こえてくるという環境だったので、常日頃から比較的優雅な文化・環境に接していたんですよね。

じゃあ優雅な世界を作るためにはどうしたらいいんだろう? そう考えた時に、クラシック音楽という切り口は、優雅に近いポイントじゃないかなと思い、クラシック音楽をフックに優雅な場所を作っていこうかなと思いました。

 

ー 「クラシック音楽の素晴らしさをもっとみんなに伝えたい!」がスタートなのかと思っていました、意外ですね。

どちらかというと「音楽を伝えたい」というよりは、「世界観を作りたい、優雅な場所を作っていきたい」というのが僕の源泉になっています。うるさい優雅さとは違う落ち着いた文化、エレガンスに近いですね。エレガンスなんだけど、それが当たり前の日常に溶け込んでいるという世界観ですね。

僕は優雅という世界観がありきで、クラシック音楽はその世界観とマッチしていると思っているから、クラシック音楽をプロモートしているんです。そこが他のプロモーターと違うところかもしれません。優雅とクラシック音楽の相性はとても良いというのが一番のポイントです。

 

ー 優雅さに目覚めたきっかけなどはあるのですか?

社会人になって優雅な体験が全然出来てないなと思ったんです。僕は海外旅行が好きでヨーロッパなどいろいろな国に行くのですが、そこでしか優雅な体験ができないなと感じて。だから、もしティッピングポイント(=きっかけ)があるとすれば、その海外に行った時の体験だと思います。イギリスやフランスに行く中で、アフタヌーンティーの文化や、日常でのクラシック音楽の生演奏、そして競馬やカジノなど、海外で体験できる優雅さが日本にはあまり無いんですよね。

小さい頃、優雅な文化は当たり前のように日常にあるのかなと思ったんですが、大人になって社会に出てみると全然ないことに気付かされたんです。所詮それは親が用意してくれたものだったんだなと。

 

ー そこで、加藤さんご自身で優雅をつくりだそうと。

そうなんです。自分が世の中に優雅を体験できる場を作っていこうと思ったのが「朝♪クラ」のスタートでした。僕はクラシック音楽をやっていたわけではないですし、演奏家とのネットワークもゼロだったんですが、今は3,500人以上の演奏家に出演して頂けるところまでなりました。優雅な世界観を作りたいという思い一つで、6年間ここまで継続できたんだと思いますし、そういった場が増えてきて、クラシック音楽が少しずつ根付いてきているという実感もあります。

 

朝♪クラの「朝」って?

ー ブランド名に「朝」というキーワードを入れているのはなぜですか?

僕らは、F1層(20~34歳の女性)やM1層(20~34歳の男性)、いわゆるこれからの日本を背負う人たちをターゲットにしています。若い人たちに興味を持ってもらえる活動を僕らはしていきたいと思っている中で、ブランドの世界観をどう表現しようかなと考えました。カタい名前にしてしまうとターゲットにアプローチしづらいので、若い人たちに好まれるようなポップなアウトプットをしようと思いました。

 

ー 実際にどのようなアウトプットをしていったのですか?

まずブランド名を作る前に、世界観を作ってしまおうと。その世界観をどういう風に表現しようかなと思った時に、「週末の朝」を想定しました。社会人2、3年目くらいの方たちや、社会人10年目くらいまでの方たちって、月曜から金曜まで働いて、土日の午前中はゆっくり、ゴロゴロしている人が多そうだなって。

そんな週末の朝にカフェで太陽の日差しを浴びながらクラシック音楽が聴けるなんて、優雅で素敵じゃないですか。その世界観を体現するブランドが「朝♪クラ」。「朝、クラシック音楽を聴きながら・・・」という世界観に共感してもらいたいなと思って作ったので「朝♪クラ」なんです。「朝しか公演しないんですか?」と聞かれるんですけど、公演の時間帯ではなくて、実現したい世界観を表現したくて「朝」を付けているんです。

朝♪クラロゴ

ロゴはブランド設立5周年を機に、リニュアル。エンブレムロゴは豪華なイメージでとてもお気に入りとのこと。

 

朝♪クラのはじまり

ー クラシック音楽の関係者や知り合いがいない中で、どのようにゼロから作り上げていったのですか?

よく聞かれるんですが、音楽のつてがある親にも一切相談せず、全くゼロからのスタートでした。僕はそれまで会社員をやっていて、企画だったり、会社との新しいネットワークの築き方など、そこで学んだことがとても活かされています。法人の新規開拓の仕事をよくやっていたので、いろんな企業とパイプがあったのが一つ強みだったと思います。

20代はほぼ人脈構築に使ってきた人生なので、今はもう勝手に紹介していただけるような状態になりました。クラシック音楽業界の人脈が無くても、20代に積み重ねてきた人脈構築のスキルがあったので、ゼロからでも新規構築することが出来ました。

 

ー 人脈構築のスキルで動き出したところで、それを持続・発展させていくというのはなかなか難しかったのでは…。

究極をいってしまうと、あとは熱意ですかね。「朝♪クラ」って初回から満員の公演しかやったことがないんですよ。そこは絶対のこだわりで、満員にならなかったら満員になるまで絶対に集めます。第1回から継続していて、第2回で130人のお客様を集めて、「朝にクラシック音楽で130人も集まるの!?」ということで話題になりました。満員御礼にしていくことをポリシーにすることで、「このブランド凄いな、面白いな」と思って共感してもらい、メンバーもさらに増えていくという。

 

ー 話題性で自然と人が集まってくる…素晴らしいサイクルですね。

メンバーになにかを強制したことが一度もないんです。「こんなイベントやっていて満員だったんだ。じゃあ、私もやってみたい」というきっかけで来てくれているので、僕から強制されたと思ったメンバーはいないと思います。「こんなことやっているんですけど興味ありますか?」と声を掛けたら、「やりたいです!」って集まってくれています。

音楽に興味持っていない人でも、僕が話すと「すごい面白そうですね」と言ってもらえるんですよね。だから今のメンバーも、音楽やってない人がいっぱいいて、同じような僕が話しているからですかね(笑)。もちろん他の仕事が忙しくなって抜けていく人もいるのですが、無理なことをやってもらっていないから、辛くて抜けていく人はいないと思います。そこがうまくいってる秘訣ですかね。

 

朝♪クラの中の人たち

ー 所属メンバーは、いろいろなスペシャリストの集合体なのですよね?

そうですね、プロジェクト単位でアサイン出来るのが僕らの強みで、繁忙期と閑散期とで柔軟に対応できる体制にしています。僕らの母体が無くなってしまったらこの活動も続けられないので、企業経営はしっかりと。もちろんマネジメントも必要なので、柔軟性を持ったメンバー構築を意識しています。

 

ー 今メンバーは何人くらいですか?

メンバーはサポートメンバーも含めると30~40人くらいいて、プロジェクトが始まると、その期間動いてもらえるメンバーを集めるという形になっています。オフィスはもちろんありますが、Webミーティングも活用していますね。

 

ー メンバーの方は、副業としてやっている方もいらっしゃるんですか?

副業、兼業、フリーランスがメインで、常勤の社員を雇用していません。今の時代にあった働き方なので、働き方の切り口でもよく取材して頂いています。メンバーを正社員で雇ってしまうと、利益を作って源泉を生み出してもらうために、閑散期にも働いてもらったり、メンバーがやりたくないこともやらせなきゃいけなくなるんですよ。

だから僕らは「やりたいことをやる」という人たちしか抱えていないんです。その分野のプロフェッショナルに、やりたい時にやりたいことをやってもらう。そうすると彼らはストレスを抱えることなく、自分の得意分野だけに集中できるので、凄い力を発揮してくれるんです。

 

ー あらゆる意味でストレスフリー&合理的な企業経営のスタイルですね。

クラシック音楽を本業とする企業がそこまで多くないのは、クラシック音楽業界になかなかお金が回ってこないことも理由のひとつだと思うんです。だから、しっかりと継続できる経営母体を作っていかないといけない。競合がいないということは、逆に僕らしかこの活動が出来ないということだと思っているので、継続性というのは常に意識してやっています。

朝♪クラ_2

とっても人懐っこい雰囲気の加藤さん、自然と人が集まってくるのもうなずける。

 

朝♪クラがやっていること

ー 年間にどのくらいの公演を手掛けているのですか?

毎年約70~80公演やっていて、1日4公演という日もありますよ。マンションやオフィスビルのロビーでのコンサートから商業施設、屋外コンサートや、社内イベントや会社の周年祭でちょっと演奏してもらいたいといったご要望まで、様々なニーズにお応えしていますが、クローズドコンサートが半分くらいを占めますね。

 

ー クローズドの場合、ターゲットはどういった方々なのでしょうか。

たとえば、マンションにお住まいになっている方たちです。これまでに、都内を中心に700~1,000世帯ほどあるマンションのロビー集会場でコンサートを開催して、毎回100名以上の規模で住民の皆さまに集まっていただいてますね。

 

ー 「日常に音楽を」というコンセプトどおりですね、依頼はどこから来るのですか?

マンションの管理企業などからです。マンションに入り込んでやっているプロモーターなんてほぼいないと思います。日常に音楽を落とし込むために必要なアクションを僕たちは取っているので、いわゆるクラシック音楽ファンに向けたアプローチをしている音楽団体とは全く違う動きをしています。

僕らの取引先で一番多いのは、不動産会社なんです。オフィス、商業、マンション、屋外といった「日常」を扱っていて、そこの雰囲気づくりというニーズでクラシック音楽を必要としてくださるので、お互いがWin-Winになってセッションさせて頂いています。こういう動きはなかなかないので、競合もいない。僕らがやりたいことをやっている、「ゴーイングマイウェイ」なんです。

 

ー 自宅でクラシック音楽の生演奏を聴く体験は、特に小さいお子さんがいらっしゃるご家庭ではとても喜ばれそうですね。

そこにもアプローチしていきたいので、ヤングファミリー向けの企画としてベビー&マタニティーコンサートや、子ども向けのキッズコンサートも展開しています。音楽知育にも繋げられるので非常に有益だと思うし、その子たちが「クラシック音楽いいな」と思ってくれることで、親子二世代に将来のクラシック音楽の文化を作っていけるかなと思っています。

 

ー 最近増えてきているクラシック音楽フェスにもご協力されているとか。

そうですね、GW恒例の『ラ・フォル・ジュルネ』や昨年から始まった『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL』とか、何万人もの若者が集まる野外クラシック音楽祭なんて今まで考えられませんでした。今年からはイギリス生まれの世界最大級のクラシック音楽祭『BBC Proms』が日本に来るのもあり、そういったかたちで若い人たちにも少しずつクラシック音楽に触れてもらえる機会が出来てきているのは嬉しい限りです。

その流れを僕らがより後押し出来ればいいなと思って、例えばエリアコンサートなどの屋外コンサートの提供をしたり、楽器メーカーとのコネクションを活かしてピアノ手配もやったりしています。大きなイベントでも、下支えの部分など、僕らが協力出来ることは積極的に取り組んで、一緒に盛り上げていきたいですね。

朝♪クラ_1

オフィスビル(赤坂インターシティAIR)での演奏のひとこま。

 

朝♪クラのこれから

ー 今後のビジョンについて教えてください。

ビジネス的な方向と、豊かな社会実現という方向の2つがあります。ただ、ビジネス的な実現がブランド・コンセプトではないので、「日本に豊かな社会を作る」ことが一番のゴールになりますね。それはあまり形として見えるものではないので、僕が満足したらゴールかなと思っています。ゴールを作ってしまうと、それを実現した時に次の目標が見えなくなってしまい、ブランドの存続意義も無くなってしまうので、ずっとゴールに向かって走り続けるイメージですね。

ビジネス的な成功という観点では、僕らがビジネス的に成功することによって、このクラシック音楽業界を潤せるんじゃないかなと思っています。クラシック音楽の領域は、みんなお金に汲々としているんですよ。だから、僕らが成功してたくさんの演奏家を起用することで還元できるようになれば、それは一つの成功と言えますよね。

 

ー 潤すためにはやはり収入を増やす仕組みは必要ですね。

クラシック音楽には投資する価値があると思って頂けるようなプロモートをして、企業からお金を引っ張れるような環境を作っていくために、その「引っ張るポイント」を今増やしているんです。

今まではコンサートだったんです。我々はコンサートを通じて、人を集められます。商業施設やオフィスの価値を高められます。音楽知育が提供できます。人と人とのコミュニケーションを創造できます。そういう価値を提供することでお金を引っ張って来ていたのですが、それ以外にもいろいろポイントがあるはずと思っていて、その一つが映像制作ですね。

 

ー 映像制作ですか?

今、映像ビジネスに関してもご依頼を頂いています。コンサートってその場に来てくださった方はもちろん楽しんで頂けるんですけど、その時のワンポイントで終わりになっちゃうんですよね。でも、映像で残しておくと、WEBサイトやデジタルサイネージで、商業施設やオフィスビル、今ならエレベーターの中でも流せる。そうやって「御社のブランディングにクラシック音楽を使いませんか?」と提案もできるんですよ。

 

ー すごく面白い提案ですね、他にも何か面白いことを考えていそうですね。

ピアニストの方々が通る道として、小さい頃に必ず練習する練習曲があるんですよ。チェルニーとかブルグミュラーとか。それらの練習曲の超絶技巧編曲って面白いんじゃないかなって。楽譜の編曲とか作曲も我々は手掛けているんですけど、ただ編曲・作曲するのではなくて、「朝♪クラ」の新ブランド「PIANOIA!」(ピアノ×パラノイア)を立ち上げて、演奏家に向けて楽譜を販売していこうと考えているんです。

楽譜販売を最終的にビジネスのポイントとして作る。ただ、それをアウトプットするのは映像であり、コンサートです。コンサートや映像というプラットフォームを僕らは持っているので。実は映像を見て「あの楽曲を私も演奏したいんですけど、楽譜は買えますか?」っていうお問合せが多くて、そこにニーズがあることは確認できているんですね。僕らが作った楽曲を、映像というプラットフォームや、コンサートの場でアウトプット出来るので、それと楽譜制作をマッチングさせて、音楽の魅力を届けながら新しいビジネスを展開していこうと思っています。

 

ー 楽譜というと、どうしても紙媒体をイメージしてしまいがちですが。

日本の1億2千万のターゲットだけではもったいないと思っているので、デジタルで世界中に発信しようと思っています。世界中からお金を集めることによって、日本のクラシック音楽業界に還元するための、ビジネス的なベースを作りたいんですよね。

 

ー 考えていることがグローバル&ダイナミックで、まさに「朝♪クラ」の世界観に圧倒されっぱなしです。

僕らは「僕らの音楽を聴いて!」じゃないんですよね。僕らの世界観に共感して欲しいなと思っているだけなので。だから全然押し売りはしていないんです。

クラシック音楽のプロモートを通じて、日本の社会を豊かにしていく。社会を豊かにというのは、国民一人一人が心豊かな優雅な日常を送れるというところに繋がっていく。ここが一番のモチベーションになっています。ほんというとクラシック音楽だけじゃなくてもいいんですが、これからもたくさんの優雅な場を作って、みなさんに提案していきたいです。

 

朝♪クラ_2

加藤 夏裕(かとう なつひろ)

KATO MUSIC & CREATIVE ENTERTAINMENT代表取締役。大学卒業後、リクルートや大手広告会社などの企業での勤務を通じてマーケティング・広告・広報・SPなど幅広い業務を経験。前職在籍時には、社内で新規事業を立ち上げ、責任者としてサービスを運営。2018年12月に独立し、「KATO MUSIC & CREATIVE ENTERTAINMENT 株式会社」を設立。現在、「朝♪クラ~Asa-Kura~」をはじめ、エンタメ系の4つのサービスラインを運営しながら事業を展開している。

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撮影協力/IDÉE CAFÉ PARC